第2章 為虎添翼ー1日目ー
「…さん、京香さん、着きましたよ」
「ん…う…あ!ごめん私ずっと借りてた」
「だ、大丈夫です。さあ降りましょう」
肩を軽く揺すられて目を覚ませば目の前には力君。
ハッと気付いて起きれば、疲れてないかと心配するも笑顔の力君を見て少し安心した。
先に降りてもらって、忘れ物がないか確認してからバスから降りればやはり私立。白鳥沢とまではいかないものの大きな学校だ。
烏野の部員たちの方へ行けば、迎えであると思われる人が居た。
やっぱり今朝見たジャージと全く同じ。
「あれっ?新しいマネージャー…じゃないみたいだね?」
「新しいコーチだよ、烏野の」
「コーチ?大学生?へぇ…お姉さん綺麗だね、今度俺とデート…ふぎゃ!」
「クソ川!てめぇ他校に迷惑かけてんじゃねぇよ!」
茶髪のイケメンが私に気付いたらしい。
大地君が烏野と強調しながら紹介してくれるものの、構わず私に近づいて来るイケメン君。
するとバレーボールが勢いよく投げられて、見事に後頭部に直撃。
情けない声をあげて崩れ落ちた。
びっくりした…ナイスコントロール!
イケメン君に罵声を浴びせたのは青城ジャージを着ている黒髪の短髪君。松川君ではないみたい。
「痛いよ岩ちゃん!」
「うっせぇ!勝手に迎えに行くとか言い出したのはてめぇだろ及川!」
「…及川…?君があの及川君?」
「あれ、俺のファン?いやー、こんなに美人な人なら及川さんデートした」
「及川さん、この人烏野のなんで…」
岩ちゃんと呼ばれた短髪君から目の前のイケメン君が及川君だとわかって驚いた。すかさず私の手を握ってきた及川君の手をとめるように掴んだのは飛雄君。
あれ、先輩後輩の関係なんだよね?
なんかバチバチしてるよ!な、仲悪いの?!
「はぁ…とりあえず合宿所に案内するからついてこい。クソ川行くぞ」
「あ、待ってよ岩ちゃん!」
「頼むな岩泉」
「ちょっと澤村クン!主将は俺!」
岩ちゃん君のおかげでピリピリとした雰囲気はなくなったけど…
何だろう、及川君は緊張感に欠けるというか何というか…
岩ちゃん君も苦労してそうだなあと思っていれば、また及川君に腕を掴まれ引き寄せられる。
ボソボソ、と耳元で囁かれた言葉に私は驚きのあまり動けなかった。
その様子を見て心配そうに飛雄君と孝支君が駆け寄ってきた。