第2章 為虎添翼ー1日目ー
ー縁下sideー
「い、いえ…京香さんに怪我とかなくて良かったです」
「力君は大地君に似てるよね。周りをしっかりと纏められることが出来る。私には出来ないことだから…羨ましい」
「大地さんに…?いやいやまだまだです」
「大丈夫、自信持っていいよ。私が保証する」
なんてにこりと微笑んでくれた京香さん。
お、落ち着いてくれ俺の心臓…聞こえてないかと心配になる。
京香さんが保証してくれるなら…自信持ってもいい、かな。
「あ、力君サンドイッチ食べる?私の朝食なんだけど、みんな食べるかなって思ってたくさん作ったんだけど…」
「じゃあ、頂きます」
「あ!力ばっかずりぃ!京香さん俺も食いたいっす」
「おい西谷!ちゃんと座ってろ」
京香さんが持っていた袋からサンドイッチを出して、差し出してくれたので受け取る。
このまま俺しか気付かなければ独り占め出来る、なんて企んだ矢先後ろから顔を出してきた西谷に見つかって、バス中にその事が知らされる。
うぐ…菅原さん、視線…痛いっす…
か、影山のオーラも恐えよ!
「たくさん作ってあるからみんな好きなだけ食べていいよ。喧嘩しないでね」
「「あざーっす!」」
京香さんは自分の分を確保してから袋ごと配り始めた。
どこまで女神様なんだこの人は…
サンドイッチを食べながら、横目で見つめてみる。
こういう時、よく食べる連中が羨ましい。
サンドイッチを食べ終わり暫くすると、どうやら眠たいのかうとうとし始めた京香さん。
「大丈夫ですか?俺の肩使って下さい」
「んー、昨日早めに寝たはずなんだけど…ええっ大丈夫だよ力君疲れちゃうでしょ」
「逆に元気になれるんで、どうぞ」
「うぅ…じゃあ、お借りします」
俺にとったら急接近出来る大チャンス!
少し強引かなって思いながらも、手放すわけにはいかないと思って彼女の頭を俺の肩に寄せた。
観念したらしい京香さんに微笑んで、目を閉じたのを見ればあまりの綺麗な顔に顔が赤くなる。
少しすると肩の重みが増し、眠ったのがわかった。
こんな綺麗な人だから…そりゃ独り占めしたくなるよ。
あぁこのまま時間が止まってしまえばいいのに…
青城に永遠に着かなければいいのに…
ーー俺にもう一歩踏み出す勇気があればいいのに……