第2章 為虎添翼ー1日目ー
早速、最低でも何時間後には再会し、私は名前を教え連絡先も教えることになるのは容易に想像出来た。
こんな偶然あるものなのか、と驚きを隠せないでいると烏野の最寄り駅のアナウンス。
と、とりあえず落ち着け私!
電車のドアが開けば、駅に降りてから深呼吸をする。
どうやら夢でも何でもないようだ。
集合時間に遅れないようにしないと!と改めて腕時計で時間を確認してから出口へと向かう。
改札を出ると、見覚えのある後ろ姿が。
「飛雄君…?」
「…!京香、さん。おはざっす」
「おはよう。どうしたの?誰か待ってる?」
「あ、いえ、えと…京香さん、待ってました」
「うえっ私?」
「…いつも、菅原さんに負けるから…一緒に、その…行きません、か」
「ふふ…うん一緒に行こうか。ありがとう迎えに来てくれて」
「…っす」
私のことを待っていてくれた飛雄君。
顔を赤くさせながらも、迎えにきてくれた様子に嬉しくなって飛雄君の隣を歩いて烏野へと向かう。
「荷物、持ちます」
「大丈夫だよ重たくないし!これね、私の朝食のサンドイッチ。みんなも食べるかなって作ってたら凄い量になっちゃったの」
飛雄君も食べてくれる?と見上げれば、コクリと頷く。
この子も口数は少ないし表情も険しいから、中々感情が読み取れないけれど若利よりはマシだ。うん、嬉しそうな顔してる。
「そういえば飛雄君は及川君を知ってるの?」
「はい、中学の時の先輩です。サーブもあの人を見て覚えました」
「成る程ー!じゃあ及川君はジャンプサーブ凄いんだね。はー若利が目を付けるわけか…」
「若利って牛島さん…?あの、彼氏…とかですか」
「彼氏?!若利が?!ないない!ただの幼馴染。若利が彼氏とか疲れちゃうよ」
「幼馴染…じゃあ京香さん今彼氏は?」
「居ない居ない!もう20歳なのにねえ…バレーが恋人かな」
「そうなんすか…良かった…」
飛雄君の口から彼氏居るのかという質問が出てくるとは思わずにビックリしたけれど。高校生だからね、色恋は気になっちゃうよね。
なんか期待に沿えなくてごめんね。と考えていれば、彼から安堵の息が漏れたことには気付かず、そのまま歩いていると烏野高校が見えてきた。
集合場所へと向かえば既に殆ど集まっていて、私に気付いた翔陽君と夕君が手を振りながら走ってきた。