第2章 為虎添翼ー1日目ー
「おっと、大丈夫デスカ」
「す、すみませんありがとうございます!」
腕を離してもらえば、背後の助けてくれた人の方を振り返って軽く頭を下げてお礼を言う。
「良かった間に合って。人が多いから大変ですよね」
「お姉さん美人だし、俺のジャージ掴んでても良いよ?」
「またお前はそうやって…気にしないで下さい」
白地にミントグリーンのジャージ姿の2人組。
助けてくれたのはくせっ毛の黒髪と太い眉、アヒル口が特徴の人。その隣にはピンクの前髪が特徴的な人懐っこい笑顔の人。
ピンクの人はチャラそう。黒髪の人は紳士そう。
それが私の第一印象だった。
「何だよ松川!良いじゃんこんな美人と中々知り合えねえぞ」
「そういうのは本人の前で言うなよ花巻。困らせるだろ?」
「ふふ、あはは…お二人仲が良いんですね」
「ま、まあ…」
どうやらピンクが花巻さん、黒髪が松川さんというらしい。
2人の会話を聞いていれば面白くて笑ってしまう。
そんな私を見て2人とも顔が赤くなる。
仲が良いって言われて照れるとか可愛いなあ、なんて思えばまた微笑ましくなった。
「あ、お姉さん名前教えて?俺、花巻貴大。こいつ松川一静」
「私は…真澄」
「えー?下の名前は?教えてくれないの?」
「次にもし会えたら、教えてあげる」
「ケチー。じゃあ、次に会えたら連絡先も教えてよ」
「んー…わかった、会えたらね」
電車の中でたまたま会うなんて2度もない、そう思った私は花巻さんからの提案に頷いた。
よっしゃ!と喜んでいる彼はもう一度私に会えると確信しているのだろうか。どさくさに紛れて、俺にも教えてネと言った松川さんにも頷いた。
「あ、俺らここで降りるから。またね真澄さん」
「倒れないように気を付けて」
「あ、はいありがとう。松川さんと花巻さん」
「あは、さん付けとか擽ったいし次に会えたら名前で呼んでよ」
「おい花巻降りるぞ」
「わかった、そうするね」
次々と約束を取り付けていく花巻さんに頷けば、手を振ってくれた2人に手を振り返す。
すると、2人の背中に書かれてあるローマ字が見えた。
AOBA JOHSAI…あおば、じょうさい…青葉城西?!
しかもVBCってことはバレー部?!
うそでしょ?!合宿の相手校?!
思わず大きな声が出そうになり、慌てて口を押さえた。