第2章 為虎添翼ー1日目ー
今年のシルバーウィークは5日間。
その5日全て合宿が行われるそうだ。
2校で5日は凄い練習量になりそうだなあ、と思いつつも明日に迫った合宿を思えば楽しくなってくる。
「明日朝早くに烏野行かなきゃだから…そろそろ寝ないと」
着替えや女子部屋で食べる用のお菓子、一応テーピングやサポーターも鞄に詰め込めば、時計を見て呟いた。
ふぁ…と欠伸をひとつ漏らせばベッドに潜り込む。
ピロン
うとうとし始めたところで、LIN○の通知音だ。
誰だー?と思いながら手を伸ばしてスマホを操作する。
んーと、あれ、飛雄君だ。珍しい…
『遅くにすいません。明日からの合宿来てくれるんすよね。スゲー楽しみです。この前言われたこと気を付けて練習してるんで、俺のトス見て欲しいです。あと及川さんには気を付けて下さい。何かあれば俺が守るんで』
飛雄君らしい文章に小さく笑ってしまう。
及川君に気を付けてって…アレか?!私が若利の幼馴染だから何かされる?!うーん…気を付けておこう。
及川君に気を付けて、の一文に気を取られ過ぎて最後の言葉を私はあまり気にせずにスルーしていた。
飛雄君に『私も合宿楽しみだよ!たくさん練習して完璧に出来るように頑張ろうね。及川君ね、ありがとう気を付ける!』と返事をすれば、おやすみというスタンプを押してから瞳を閉じた。
ピピピッピピピッ
翌朝の早朝。かけていた目覚ましの音で目を覚ます。
ふぁーあ。大きな欠伸をして伸びをすればベッドから起き上がる。
こんな早朝だとお腹空いてないからバスの中で食べることにするかなと思えば、大学の部ジャージを着てから朝食にとサンドイッチを作る。
あ…みんなも食べるかな?
運動部の男子はよく食べるしなあと思い出せば、部員たちにも配れるようにと結構な量を作る。
いま一度忘れ物がないかを確認して、荷物と朝食を持って家を出る。
流石シルバーウィーク初日。
朝から結構な数の人が大きな鞄を持っている。
烏野の最寄り駅まではもう少しかかる。
チラッと腕時計で時間を確認して流れる景色をボーッと見つめる。
バレーに青春を捧げている彼らにとって、意味のある合宿になれば良いなと思った。
「う、わっ…」
急に電車がガタンと揺れ、何も掴んでなかった私はバランスを崩して倒れそうになった
ーが、ガシッと腕を誰かに掴まれ何とか倒れずに済んだ。