第1章 合縁奇縁
ー菅原sideー
今日いきなり現れた女性、真澄さんが正体不明だった"勝利の女神様"だったなんてびっくりした。
確かに山口や月島に対して言っていたことは的確で、今日初めて会ったはずなのに何でそこまで?っていう程だったけど…
俺についても、信頼があるって言ってくれて凄く嬉しかった。
あの優しい笑顔に、俺は惚れてしまったのかもしれない。
俺と目が合うと微笑んでくれて、あ、もしかしたらイケるかな?なんて自惚れたり…真澄さんが見てると思うといつも以上にやる気が出たり。
ーー俺、何考えてるんだろ……
影山が真澄さんに迫った時は慌てて影山を押さえたけど、ちゃっかり大地に真澄さん取られるし。
本当俺って最後の詰めが甘いんだよなあ…
大地も真澄さんのこと好きなのかな?
…じゃないとあんなことしないよな。
なんて考えてたら、どうやらこれからも烏野に関わってくれるらしい。よっしゃ!一目惚れなんて自分でも信じられないけど、誰かに取られたくない。大地にも…恐らく影山にも。
解散した時、真澄さん…じゃなかった京香さんが電車で帰るって聞こえてきた。
これは誰かに行かれる前に行かなきゃって思って急いで着替える。
「スガ、何そんなに急いでんだ?」
「ん、ちょっとね…大地大地」
「ん?何だ?」
ロッカーが隣の旭に不思議そうに見られるも、誤魔化してから着替え終われば反対側の大地を手招く。
近付いてきた大地の耳元に唇を寄せて、他の誰にも聞こえないようにボソリと言えば大地の身体がビクッとなった。
やっぱりそうだったのか…
その反応に俺は確信すれば、鞄を掴んで部室を飛び出す。
お疲れー!と言いながら彼女の後を追う為に走る。
ーー俺、京香さんのこと好きかも。大地にも負けねえからな。
再度大地に言った言葉を噛み締めながら、京香さんを探す。
烏野と駅の丁度真ん中の距離あたりの赤信号の横断歩道。
あの茶色の髪にTシャツとジーンズは彼女だ。
「京香さん!」
信号待ちをしている彼女を見つければ、声をかけて駆け寄る。
俺の姿を確認すれば、驚いた顔から笑顔になる。
うん、その笑顔。
俺はその笑顔が好きだよ…京香さん。
俺だけに向けられる笑顔になれば良いのに……。