第1章 合縁奇縁
「ーー最後になりますが、本日見学されてた真澄さんが烏野のコーチ補佐として代表決定戦までですが指導なさってくれることになりました」
「武田先生と烏養コーチに頼まれ、コーチ補佐になりました。えっと、知ってる通り私の母校は白鳥沢なので情報は渡せないし、優先は白鳥沢でも構わないとのことでしたので承諾しました。でも、やるからには手は抜かないし、烏野が全国へ行けるように精一杯頑張ります。あ、それと名字で呼ばれるの慣れないので名前の方で呼んでください。宜しくお願いします」
「「お願いしあーす!」」
武田先生からの連絡事項の後、烏野コーチ補佐として紹介してくれたので改めて宜しくと頭を下げた。
そしたらみんな笑顔になってくれて、それにつられて私も笑みを浮かべた。
頼まれたからには本気でやってあげないとね!
今度時間あったらちゃんとノート持ってこようと思い、次に彼らの練習を見れる日が楽しみになった。
「本当にありがとうございました。どうやって帰られます?送って行きましょうか」
「いえいえ!此方こそ暖かく迎えて頂いて…あ、電車で帰るので大丈夫です!方向音痴なんて可愛いスキルもないので。あ、武田先生これ私の連絡先なので何かあったらご連絡ください」
「そうですか…?あ、はいわかりましたありがとうございます。じゃあ僕のも…」
解散した後、武田先生に話しかけられれば連絡先を交換する。
車で送っていくと言われたのだが申し訳なくて断れば、乗らざるを得ない状況になる前に退散しようと荷物を持った。
「では私はこれで。また来れそうな時は武田先生に事前に連絡しますね」
「はいわかりました。ご連絡お待ちしてますね」
「お先に失礼します。ありがとうございました」
武田先生と烏養コーチに軽くお辞儀をして体育館を出れば、部室へと向かっている部員の後ろ姿が見えた。
相変わらず日向君と影山君は競っているらしく、何やら叫びながら走っていくのが見え、思わず笑みが溢れた。
「あっ!!京香さーん!またお待ちしてます!」
「田中君ありがとう!またね!」
田中君が私に気付けば手を振ってくれた。
私も振り返せば、涙をブワッと出してうおおおおと叫びながら走って行ってしまった。
近くに居た部員にも手を振れば、またスマホを取り出して最寄りの駅までの道を確認しながら烏野高校を後にした。