第8章 奮励努力ーsugawaraー
「そろそろ勉強はじめよっか」
「宜しくお願いします」
アルバムを本棚に戻し、教え易いように孝支君の隣に座れば彼の持ってきていた教科書や参考書、問題集を開いて勉強会が始まった。
孝支君がわからないと言ったところは何とか覚えていた範囲でホッとする。これで私がわからないなんて言ったらうちの大学に進学するの辞めるなんてことになりかねない。
孝支君だって今じゃ飛雄君の影に隠れてしまっているが優秀なセッターだ。十分うちのチームで活躍できる。
気持ちの強さでいったら最高クラスだろう。
「ふぅ…よし、ちょっと休憩しよっか」
問題集がひと段落つき、私から休憩の提案をすると孝支君も疲れていたようで頷いてくれたのでジュースのおかわりを持ってくると席を立った。
「そういえば孝支君は何でうちの大学に?行きたい学科とかあったの?」
「いえ…近付きたい人が居て…」
「近付きたい?あ、もしかして黒川君?」
「黒川くん…?え、もしかしてうちの先輩の黒川広樹?」
「うん、その黒川君。あれ違った?てっきり黒川君がうちに居るから孝支君が目指してるのかと…」
私が黒川君の名前を出すと驚いたような顔をした孝支君。
珍しく私の読みが外れたようだ。黒川君じゃないなら誰に近付きたいんだろう…そう考えているといきなり孝支君が吹き出したので今度は私がびっくりして。
「ご、ごめん。京香さん鈍感で可愛いなって思って」
「鈍感?!え、私鈍感?!初めて言われたんだけどそんなこと」
「お、じゃあ俺だけが知ってる京香さんってことか」
「ふふ、そうなるね。そっか、私にも漫画のヒロインみたいなとこあったんだねー」
「え、何それ漫画のヒロイン?」
「うん、ほら漫画のヒロインって可愛くて、ちょっと天然で、みんなから愛されて、方向音痴で道に迷ってイケメンと知り合ったりとかさ、するじゃない」
「道に迷ってイケメンと知り合えるかはわかんないけど、そんなイメージって言うのはわかるなー」
「でしょ?でもほら私って、天然でもないし、方向音痴でもないし…どっちかっていうとサバサバしてるというか。バレーに関しては男子と渡り合えるし…」
こんな話を孝支君は笑顔で頷いたり相槌をうちながら聞いてくれていて、こんな話誰にもしたことなかったのに私はいつになく饒舌に語っていた。