第8章 奮励努力ーsugawaraー
「このユニフォーム着てバレーしてる京香さん見たかったな」
「もう流石にこれ着るのは…あ、アルバムあるよ。見る?」
ユニホームを見つめたまま呟いた孝支君に、中学時代のアルバムがあることを伝えると見たいと頷いたので本棚から数冊大きなアルバムを引き出してテーブルの上に置いた。
そのアルバムは両親が私とリコの活躍をまとめてくれていたもので。暫く見ていなかった為か少し埃が被っている。
「これはね、私が中学の時の初めての大会。新人戦の決勝で負けちゃった時の。悔しかったなー…デュースに持ち込んだんだけど押し切られちゃってね…毎回負けると私は泣いてて、妹が慰めてくれるの」
「…京香さんあんま変わってないな。顔も負けず嫌いなとこも」
「そう?えー顔は大人っぽくなってるでしょー?」
「大人っぽくなってるけど、やっぱり面影はあるべ」
アルバムの中の泣いて不細工な顔になってる私と今の私を孝支君は何度も見比べて「今も泣いたらこんな顔?」なんて笑いながら言うものだから「失礼な!」と孝支君を軽く叩いて笑い合う。
「これは、中3の時の大会。リコと一緒に戦った最後の大会…一応全国行ってるんだよこれでも!」
「凄いな全国か…2人とも良い笑顔」
「うん、この時すっごく楽しかった…孝支君、全国とかは?」
「ないない!…だから行きたい。あいつらと、全国に」
「よし、行こう全国!大丈夫だよ、烏野強いもん」
「"勝利の女神様"もついててくれてるし」
拝むように手を合わせた孝支君に恥ずかしくなって俯けば、そっと手を包み込まれて顔を上げればニカッとしたような満面の笑みの孝支君。
「俺ね、本当に京香さんに出会えてよかったって思ってる。今は影山に負けてるけど、試合に出ること諦めずに頑張れるの京香さんのおかげ」
「いやいや、それは孝支君自身の力だよ。とっても強い心を持ってる孝支君の」
「その強い心を持たせてくれたのは京香さんだべ。貴女がレギュラーだけじゃなくて、控えの俺たちのこともちゃんと見ててくれるから」
「それって凄い力になんだよ」と笑顔を浮かべたまま話してくれた孝支君に、改めて烏野の力になれてることが嬉しくて目頭が熱くなる。
「俺たちが京香さんのこと全国に連れて行くから」
ギュッと手に力が入った孝支君に私は頷いた。