第1章 合縁奇縁
吃驚して振り返ると、そこにはみんなが居た。
恐らく声を出したのは影山君。
鋭い目は大きく開かれて、頬を染めながら震えているようだ。
「あー・・・お前ら聞いてたのかよ・・・」
「すみません、止めようとは思ったんですが気になって・・・」
烏養コーチがバツが悪そうに頭を掻く。
一応彼なりに部員に聞かれないように気を使ってくれたらしい。
いやそれならタイミングってもんがあるでしょうよ。
まだ部活終わってないのに呼び出すとか気にならないわけないでしょ!
いや付いていった私も私か・・・
私がひとり混乱していると、いつもなら止める役割であろう澤村君が苦笑しながら軽く頭を下げた。
「あの、本当に真澄さんが"勝利の女神様"なんですか?」
「なあ"勝利の女神様"って何だ?」
「日向ボゲエ!知らねえのかよ!」
「あはは、日向は本当"小さな巨人"にしか興味がないんだな」
澤村君の傍にいた菅原君が話しを戻す。
すると日向君は私の異名について知らなかったのか隣の影山君に尋ねると、影山君は知っているのか興奮気味に日向君を怒っている。
すかさず菅原君が日向君をフォローするように影山君をなだめた。
なんかお母さんみたいだな、なんて思ってしまった。
「俺、一度記事を読んだことがあります。強豪白鳥沢を王者へと押し上げたのはマネージャーだったって・・・その人の異名が"勝利の女神様"」
「俺もそれ読みました。プレーヤーのクセを見抜き、的確な指示によって力を伸ばしたって。俺、"勝利の女神様"に会いたくて白鳥沢受けました!お、落ちたけど・・・」
私の出ていた記事について話しだしたのは澤村君。
続けて影山君も興奮気味に話をする。
頷いてるとこを見ると3年生はみんな知っているようだ。
その話を聞いた日向君は目を輝かせて私を見てくる。
いや、日向君だけじゃなかった。
みんなだ、みんな私のこと見てくる。これは逃げられない・・・
「・・・はあ。わかりました正直に話します。烏養コーチが言うように私は高校生のときに"勝利の女神様"って呼ばれてました」
「!!!真澄さん!俺のサーブどうでした?トスは?何か改善するところはありました?速攻の成功率を」
「え、ちょ、影山君まっ」
肯定した私にずいっと影山君が一歩前に出れば、そのままずんずん近づいてくる。