第1章 合縁奇縁
ピーっと試合終了の笛が烏養コーチから鳴らされた。
結果はAチーム25:Bチーム22で、Aチームの勝ち。
惜しいとこまではいけてたんだけどなあ・・・
でも一回のアドバイスでここまで出来るのは上出来でしょう。
良い試合見せてもらったなあ・・・
「少し休んだらストレッチして今日は終わっとけー」
「おす。ほら休みながらもストレッチするぞ」
烏養コーチの言葉に頷いた澤村君の掛け声で、2人組みになればストレッチを開始する。
さて、私もだいぶお邪魔しちゃったし片付けの手伝いでもしようかなと思っていると、烏養コーチが此方の方へ歩いてきた。
「ちょっと、いいか?」
「私ですか?はい、いいですよ。なんでしょう?」
「じゃぁ・・・ちょっとこい」
どうやら用があるのは私らしい、先ほどのいやな予感が頭をよぎるものの断るわけにもいかなくて頷く。
この場では言いにくいのか、体育館の外へと歩き出した烏養コーチのあとについて私も外へ出た。
一歩外に出ると、体育館とは違う暑さが襲ってきて頬を撫でる風が生暖かい。
「えっと、真澄・・・さん」
「ふ、私のこと呼び捨てで構いませんよ?」
「悪ぃ、さん付けとか苦手でよ・・・。んじゃ真澄」
「いえ大丈夫です。はい、なんでしょうか」
「お前さ・・・高校の時――――」
私のことをさん付けで呼んだ烏養コーチ。
しかしそれはぎこちなくて、慣れていないことがはっきりとわかった。呼び捨てで大丈夫だと言えば、照れくさそうに金髪の頭を乱暴に掻きながら私の名を呼んだ。
続いた烏養コーチの言葉に驚きのあまり動けなくなった私は、試合のときに感じていた烏養コーチからの視線といやな予感が的中したのだと確信した。
「す、すみません・・・もう一度お願いします」
「だから!お前なんだろ?白鳥沢を王者に押し上げた貢献者"勝利の女神様"って・・・」
・・・やはり聞き間違いじゃなかった。
バレてる!私のことバレてる!
月間バリボーに出たのはあの1回だけだし、数年前のことだから気づく人なんて居ないだろうと高をくくっていた。
しかも、烏養コーチの言葉は疑惑ではなく確信。
「ど、どうして・・・」
「その話本当ですか!!」
どうしてそう思ったのかと尋ねたくて口を開くと、それを遮って後ろから大きな声が聞こえた。