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【ハイキュー!!】 勝利の女神様

第8章 奮励努力ーsugawaraー


ードクン、ドクン。

耳元で鼓動が聞こえる。これは孝支君のものなのか私なのか…

電車が揺れて人に押される度に私を抱き締める力は強くなり、その腕の中で守ってくれているようで。恥ずかしすぎて顔を上げることが出来ない。

そのままの状態で最寄り駅のアナウンスが流れた。

「こ、孝支君…次降りるよ」

「…わかった」

軽く胸を叩いて知らせ、電車が停まればやっと孝支君は腕の力を緩めてくれた。その腕からスルリと抜け出し、人の流れに乗って電車から降りようとすれば今度は手のひらが包まれて。

驚いて振り返れば、悪戯な表情を浮かべている孝支君。

「京香さんがどっか行っちゃわないように、な」

そう言われてしまうとさっきのことがあったので何も言えなくなる。それに気付いたのか孝支君はまた笑って「行くべ」と歩き出したので私も頷いて改札を出た。

…繋いでいる手が熱い。

いつも歩き慣れている自宅への道なのに凄く遠く感じる。

「あそこのマンションの二階ね」

「へー、やっぱセキュリティとかしっかりしてるんだ」

「そりゃ女の一人暮らしだから…でも学生マンションだから高くはないんだよ。どーぞ」

マンションのエントランスに着けばドアを開けて孝支君を招き入れる。こういうマンションは初めてなのかキョロキョロとしている姿が可愛らしくて、今度は私が繋いでいる手を引いて歩く。

「ごめんね、うち綺麗とは言えないけど…勉強出来るスペースはあるから!」

「お邪魔しまーす。いやいや全然綺麗だべ!」

「そう?ありがとう。ここで勉強しようか。飲み物持ってくるから座ってて」

いつも私自身が勉強しているリビングに孝支君を案内すればキッチンに行き冷蔵庫からお茶を出してコップに注いで持っていく。たまたま昨日買い物に行っていたからちゃんとした飲み物があって良かったと一人安堵して。

孝支君は立ったまま部屋を見渡していて、私と視線が絡めば「ご、ごめん!」と慌てて座ったので思わず笑ってしまった。

「何も面白くもない部屋でしょ?」

「ううんそんなこと!あれって…」

「ん?あぁ、あのユニフォームは選手時代の私のものと妹の」

孝支君が指差したのはハンガーにかけてあった2着のユニフォーム。中学時代のそれは私にとっての今の原動力であり大切な宝物。
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