第8章 奮励努力ーsugawaraー
ー菅原sideー
「私勉強って得意じゃないからうまく教えられるかわかんないけど、それでもいいなら」
少し恥ずかしそうに頬を掻きながらそう言ってくれた京香さんに俺は何度も頷く。よっしゃ!なんて叫びたいのを必死に抑えて。
「孝支君いつ時間あるの?今日とか私暇だけどどう?」
「今日、うん、大丈夫かな。俺、丁度勉強道具持ってるし…」
「じゃあこの後勉強しよっか。偉いなー部活にまで勉強道具持ってくるなんて…私とは大違い」
なんて笑う京香さんにそんなことないって否定する。今日京香さんを誘って勉強出来たらなって思ってたから持ってるんだなんて言えるわけもねーし。
どれもこれも全部貴女に近付く為だなんて言ったらなんて思うかな。んなこと言えないけど…
「じゃあどっかファミレスとか…」
「あーうち来ればいいよ!私一人暮らしだし、ね」
「…え?」
「ファミレスだとお金かかるし煩いから集中出来ないし…あ、うち嫌?」
「や、い、行きます!」
「ふふ、じゃあ決まり」
彼女の提案に思わず声が裏返る。クソ、みっともねえな俺…!
そんな俺を見てクスリと笑った京香さんは再び歩き出したので俺も彼女の隣を歩く。
急展開過ぎて頭がついていかない。
今から京香さんの家で勉強…当然、二人きりだよ…な。俺だって男でしかも京香さんのこと好きだって伝えてあるべ。どんだけ警戒心がないんだよ!これが俺じゃなくて及川や花巻だったと考えると…
「はい、孝支君」
「え、あ、すみません」
スッと差し出されたのは切符。
それにハッとして受け取れば、京香さんは微笑んでから行こうかと歩き出しから俺も着いて行く。
動揺し過ぎていて上の空だったらしい…何してんの俺。
「京香さんはよく男友達とか家に招くの?」
「ううん滅多にないかな…よく来るのは若利くらいで」
「牛島か…何、しに?」
「んー、大抵はバレー関連かな。若利は翔陽君や飛雄君並…もしかしたらそれ以上のバレーバカだから。…わっ」
「っと、あぶねー」
電車が来れば乗り込んだのだが休日だからか混み合っていて、京香さんが人の流れに押されはぐれそうになり咄嗟に手を掴んで引き寄せた。必然的に彼女は俺の腕の中。
動けないのを良いことに俺は彼女を抱き締めた。