第8章 奮励努力ーsugawaraー
ー菅原sideー
「んな怖い顔すんなって影山。早い者勝ちだべ?」
「…わかってます」
「ぶは、言葉と表情合ってないなあ。ま、明日はお前に譲ってやるけど、負ける気はないからな?彼女も…セッターも」
「俺も負けません」
「おーい影山ー!お前も片付けしろよなー!」
京香さんが清水たちの方へと片付けを手伝いに行った後、俺と影山の間には火花でも散ってるんじゃないかって程の空気が流れて。
凄い悔しそうな顔をしながらも、わかってると頷いた影山がおかしくて俺が噴き出せば、益々濃くなる眉間の皺。
体育館倉庫からモップを持った日向が影山を呼んだことで、俺たちを包んでいたピリッとした空気はなくなり、影山は軽く俺に頭を下げてから日向の方へと走って行った。
全く恐ろしい後輩だよ…
「スガー!ちょっと手伝ってくれー!」
「今行くー」
俺も片付けしようかなと思っていると、ポールを持った大地に呼ばれて走っていく。どうやら一人で運ぼうとしたらしい。怪我したらどうすんだよバカ主将。
「一人で運ぼうなんて、何危ないことしようとしてんだよバカ大地」
「あ、いや…手が空いてそうな奴居なかったからさ。でもほら、ちゃんとスガ呼んだし」
「呼んだし、じゃねーべ」
困ったように頭を掻いた大地は、俺が怒っていることがわかったのかすまん、と謝ってからそっち持ってくれと言うので体育館倉庫にポールを片付けた。
体育館倉庫を出ると、何やら旭と京香さんが話していて。チラッと大地を見れば視線は同じで、大地がそれだけ京香さんのことを意識しているってことがわかった。
「旭ー何してんの」
「あ、孝支君に大地君!良いとこに!」
旭に声をかけると一緒に居る京香さんが手招きしてくれたから大地と顔を見合わせた後、二人の方へ。
彼女の口から大地の名前よりも俺の名前の方が先に出てきたことにちょっと優越感に浸っているなんて誰にも言えないけど。
話を聞けば、今更になって緊張してきたらしい旭を京香さんが落ち着かせていたらしい。
「「ひげちょこめ…」」
その話を聞いた俺と大地から漏れた言葉は見事に同じで、それを聞いた京香さんは噴き出して笑うから、そんなところも可愛いな、なんてつられるように俺も笑えば旭だけが「笑うなよ!」なんて狼狽えていた。