第7章 一寸光陰 ーoikawaー
「えっと、大したものじゃないんだけどね。今日1日ずっと徹君にエスコートしてもらったりとか、奢ってもらったりとかのお礼。貰ってくれる?」
「え?これ…俺に?」
ガサガサと鞄の中から綺麗にラッピングされた先ほど購入したマフラーを取り出せばそっと差し出す。
なんだかジッと見つめられていると恥ずかしくなってくるが、私が頷けば満面の笑みを浮かべて受け取ってくれて安心した。
「早速あけてもいい?」
目を輝かせて、新しい玩具をもらった子供のような表情の徹君にクスリと笑って再び頷けば、丁寧にラッピングを剥がし始めて。
「京香ちゃんこれ…!」
「うん、さっきお店で徹君が悩んでたマフラー。凄く似合ってたし、徹君も気に入ってたみたいだったからプレゼント」
「ありがとう…!俺すっごい嬉しい!大切に使う!一生大事にする!あぁもう幸せ過ぎて死んじゃいそう…」
透明の袋に入れられたマフラーを見れば、徹君は私とマフラーを何度も見比べる。そしてそのマフラーをギュッと大事そうに胸に抱えてから、高揚させた顔を隠すように覆えばふにゃふにゃっと悶えているように身体を震わせている。
こんなに喜んでもらえるとは思ってなかったので、私まで嬉しくなる。徹君の反応にクスクス笑っていれば、ガバッといきなり顔を上げたのでビクッとする。
「なんかこれ貰った後だから出しづらいんだけど…」
どうやら緊張しているらしく、深呼吸をしている徹君。
ゴソゴソとポケットから取り出された小さめだが可愛らしくラッピングされた袋を差し出してくれて。
「これ、京香ちゃんに。今日は俺の我が儘聞いてくれてありがとう。ほんとに楽しかった」
「ありがとう…私も開けて良い?」
頷いた彼を見れば、小さな袋を受け取って中身を取り出す。それは横を向いたペンギンのストラップで。可愛らしい見た目に笑みが零れる。
「可愛い!ありがとう。携帯につけるね!」
「うん、これ実は俺のとお揃いでね…」
もう一つ袋をポケットから出した徹君の手元を見れば、同じように横を向いたペンギンのストラップが。私の手のひらに2つ乗せて、お互いを向かい合わせにするとキスをしているものになり。
要は2つで1つとなるペアストラップ。
恥ずかしいけれど、折角買ってくれたんだしと思って再びありがとうと伝えれば、腕を掴まれ彼の匂いに包まれた。