第7章 一寸光陰 ーoikawaー
ヒラヒラと徹君の指先で揺れる二枚のチケット。
本当に今日1日を完全にエスコートする予定らしい。
何から何まで完璧過ぎて…
よくよくチケットを見てみると、思わず何度も確認してしまう。
そんな私の反応に徹君の表情は得意げなものへと変わっていく。
「徹君このチケット…!手に入らないっていう…」
「京香ちゃんと見たくて頑張って手に入れたんだよ」
そのチケットはこの水族館が入っているショッピングモールの最上階にあるプラネタリウムのペアチケット。
全てがカップルシートとなっていて、ソファに寝転ぶような状態でプラネタリウムをゆっくりと鑑賞出来ると話題になり、アロマの効果もあって癒しのひと時を過ごせると雑誌で取り上げられるほど。
座席数も少なく、上演回数も限られている為チケットは入手するのが大変困難なのだと大学の友人が話していたのを耳にしたことがある。
彼氏が居ない私からしたら縁のない話だと思っていたが、そんなに話題になるならと一度見てみたいなとは思っていた。
その気持ちを素直に伝えると、徹君は嬉しそうに微笑んで。
「じゃあ京香ちゃんも初めてなんだ。良かった」
「そりゃそうだよ。彼氏居ないし…」
「今日は居るでしょ!俺!」
「ふふ、そうでした。ありがとうね徹君」
クスクスと笑いながら、そろそろ上演時間だからと最上階を目指す。階を上がるごとに、周りは恐らく同じ目的のカップルばかりになっていて。今更ながらに恥ずかしくなってくる。
目的の最上階に着けば、劇場の入り口でスタッフがチケットの確認をしているようで。
「ちょうど俺たちの回みたいだ。行こう京香ちゃん」
「うん」
チケットを確認した徹君は、そのまま私の手を引いて入り口へ。チケットを見せれば中へと案内された。
一歩中に入ると、先ほどの水族館よりも照明は暗くて自然と目が細くなる。既に座ってるカップルが数組居て、どの人を見てもピッタリと寄り添い楽しそうに話している。
カップルシートなのだし、そういうのが人気なプラネタリウムだ。当たり前の光景だろうと思うも、緊張してしまう。
「京香ちゃんあそこにしようか。…大丈夫?」
少し奥に行ったソファに座る。緊張しているのが徹君に伝わってしまったのか少し心配そうに見つめられたので、大丈夫と微笑んでから私も隣に座った。