第7章 一寸光陰 ーoikawaー
水族館から出れば、明るくなった照明が眩しくて目を細める。
次の場所に行く前にさっきのマフラーを買っておかないと、と思えばなんて言ってこの場から離れようかなと思考を巡らす。
やはりここはお手洗いに…て言うのが得策か。
少し戻るのが遅くなっても、混んでてって理由があるし…よし。
「水族館楽しかったー…ね、徹君ちょっとお手洗い行ってきてもいい?」
「俺も楽しかった。うんわかった、俺この辺に居るね」
「ん、また女の子に囲まれないようにね」
クスクス笑ってからかいながらも、ずっと繋いでいた手を離す。
トイレがある方向へと歩いて、彼から見えなくなったところで急いで下の階へ。
徹君はカンが良いから、バレないうちに戻らなくちゃと思えば自然と早足だった歩みは駆け足となり人にぶつからないように気をつけながら走る。
「す、すみません!さっきお願いしてたマフラーを…!」
「お待ちしておりました。此方ですね、ラッピングしておきましたので…」
「ラッピング…!ありがとうございます嬉しいです!」
「喜んで頂けたら良いですね」
店員さんの言葉に何度も頷く。
支払いをして、袋をバックの中に入れれば礼を言ってから徹君の待っている場所まで急いで戻る。
短距離ではあるが、これだけダッシュしたのは久しぶりかもしれない。息があがっているので、不審がられないように少し呼吸を整えて髪も軽く直して…
キョロキョロと徹君を探せば、さっき待ってると言った場所に居るのが見えた。流石にカップルが多い為か、待ち合わせの時のように女の子たちに囲まれてはいないようだ。
しかし、遠目から見つめられているあたり徹君のイケメンぶりは凄いのだとわかる。確かに、少し伏せ目がちで私を待っていてくれている姿は誰が見てもカッコ良いと思うだろう。
「あ、京香ちゃん」
私がゆっくりと徹君の元へと近付けば、気付いてくれた彼は忽ち笑顔になって駆け足で迎えに来てくれて。有無を言わせず再び私の手は彼の手に包まれた。
まるで子供が母親を見つけたように…
少しでも離れたくないのだと、無言の訴えのようにも感じた。
「お待たせ。ちょっと並んでて…」
「ううん大丈夫。さ、次のとこ行こ」
「次はどこに連れてってくれるの?」
「ジャジャーン!」
笑顔の徹君が鞄から取り出したのは……チケットのようだ。