第7章 一寸光陰 ーoikawaー
「本当にスパイクとかも強打しか打たないし…」
「それはまた大変だね。でも動きは練習してた動きなんでしょ?」
「うん、どこかでやってたみたいだね」
「じゃあ大丈夫だよ。徹君はスパイカーの力を存分に引き出せるもの。必ず使いこなせる」
「京香ちゃん…はは、本当不思議。京香ちゃんに大丈夫って言ってもらえると大丈夫な気がしてくる」
徹君の表情が少しスッキリしたものになって安心する。
青城も本気で全国目指してるんだ。ガッチリ合っている歯車に敢えて異端児を放り入れる。どういった化学反応が起こるのか、吉と出るか凶と出るか。青城にとって賭けでもあるかもしれない。
「それに一君たちだって、キョウケンちゃんを受け入れてるんでしょ?」
「よく動けてるし、良いんじゃない?って…使えれば戦力としてマッキー以上かもしれない」
「貴大君以上って…それ凄いね!見てみたいなー」
「代表決定戦では使えるようにしないとね。楽しみにしてて」
いつものように微笑んだ徹君に私も微笑み返す。また一つ代表決定戦での楽しみが増えたようだ。キョウケンちゃん。よし覚えた。
「さ、そろそろ別のとこ行こうか」
「そうだね。ペンギンちゃんたちまたね」
話し込んでいて気づかなかったのだが、いつの間にか餌やりも終わっていてまたペンギンたちは思い思いに泳いだり身を寄せ合っていた。軽く手を振ってから順路と書かれた看板が示す方へと歩く。
どうやら最後の展示まできたらしい。
LEDで赤や黄色に照らされている大きい水槽にはクラゲが。
椅子も用意されていて、カップルたちが座ってクラゲを見ながら話している姿がちらほらと見られる。
私たちも少し見て癒されてから出口へと向かう。
そこには先ほど撮ってもらった写真がたくさん貼り出されていて。
「あーやっぱり…恥ずかしいんだよねコレ」
「俺は嬉しいよ。今日は京香ちゃんが彼女だって言えるから。俺写真買ってくる」
「え、買うの?!」
「京香ちゃんとの大切な思い出だからね」
そう言われてしまえば何も言えなくなるのだが。笑顔の徹君はそのまま係員さんの方へ行き、引換券を渡して写真を購入したようだ。
その写真を見ては顔を綻ばせる徹君に、私は何とも恥ずかしい気持ちでいっぱいになった。