第7章 一寸光陰 ーoikawaー
そのまま歩みを進めると、通路みたいな狭い場所から天窓がついた明るく広い場所に出た。
その中央にはペンギンたちがよちよちと歩いていたり、水中を素早い動きで泳いでいる。
「ペンギンだ…!可愛いー」
テンションの上がった私は徹君の手を引いて柵の前へ。
3種類ほどのペンギンが居るらしい。写真と説明を見ながらペンギンを見比べる。
すると、餌やりの時間かタイミング良く飼育員さんが入ってきた。
ペンギンたちもわかっているのだろう、一斉に飼育員さんに群がる様子を見て思わずクスリと笑ってしまう。
何だか烏野に見えてきた…
「何かあの群がりよう、烏野みたい…」
「凄い!同じこと思った!」
徹君の呟きに吃驚して、お互いに顔を見合わせれば笑い合う。
「あの小さくて飛び跳ねてるのが翔陽君。張り合ってるのが飛雄君」
「首を上下に動かしてるのは坊主君かな…頭が黄色いのはリベロ君」
「夕君に至っては見た目だけじゃん…!」
「見た目もだけどほらあいつ…」
徹君が指をさした先を見れば、夕君だと言ったペンギン。飼育員さんがひょいっと餌の魚を遠くに投げると綺麗に滑って口でキャッチしていた。
まるで、夕君がレシーブする時のような綺麗な動き。
「あのペンギン、バレーさせたら良いリベロになるね…」
「京香ちゃん、ペンギンにバレーって…あははっ」
「わ、笑わなくてもいいじゃん!だって凄い綺麗な動きだよ!」
「ごめんごめん、つくづく京香ちゃんはバレー好きなんだなってわかったよ」
「でも徹君も夕君のこと認めてるんだ?渡君じゃなくて…」
「確かに渡っちもいいリベロだけどさ…西谷君はムカつくくらい上手いと思うよ。あとは澤村君」
「そうだね。大地君は守備の土台って感じ。青城では一君かな」
「岩ちゃん?んー…確かに、コート内での土台は岩ちゃん。狂犬ちゃんも岩ちゃんの言うことしか聞かないし…」
「キョウケンちゃん…?」
聞いたことのない名前にきょとんとすれば徹君を見上げる。あまりスッキリとした表情ではないところを見ると、手に負えないタイプなのかな。
「京香ちゃんにならいっか…実はね…」
少し考えた様子の後、話してくれた徹君。
部に戻ってきた2年生。コミュニケーションも上手くとれないとなると大変なんだろうなということは容易に想像出来た。