第7章 一寸光陰 ーoikawaー
そのまま他の店には目もくれずに水族館の階を目指して歩く。
ふと、視界の端にミントグリーンの爽やかなマフラーが映り、目で追う。ミントグリーンといえば青城カラーだ。きっと徹君に似合う。
「ねね、徹君ちょっとストップ!」
「ん?どうしたの?」
「気になったものがあったの。こっちのお店」
クイッと徹君の手を引けば不思議そうに見てきたので、微笑んで今度は私が彼の手を引いて歩く。
「これ、凄い綺麗な色。徹君試しにつけてみてよ」
「本当だ、そういえばマフラー買い換えたかったんだよね」
少し名残惜しそうに彼の手が離れれば、私が渡したミントグリーンのマフラーを首に巻いた。鏡の前に行けば、気に入ってくれたのか買おうか悩んでいる様子である。
そのマフラーは徹君に凄い似合ってるし、よし、後でこっそり買いにこようと企めば店員さんを探す。
「ちょっと私向こう見てきて良い?」
「うん、わかった」
レディースの方に店員さんが居るのを確認してから、徹君に服を見てくると少し嘘をついて店の奥へ。此方を見てないのを確認すれば店員さんに声を掛ける。
「あの、すみません。あそこで試着してるマフラー、後で買いにくるのでレジでとっておいてもらっても良いですか?」
「ミントグリーンのマフラーですね。かしこまりました」
「すみませんお願いします」
コソコソと店員さんに話せば、状況を理解してくれたのか微笑んで頷いてくれた店員さん。軽くお辞儀すれば、お待ちしておりますねと言ってくれたので、微笑み頷いてから徹君の元に。
「ごめんね寄り道させちゃって…」
「ううん大丈夫だよ。このマフラーはまた買いにこよう。よし、行こうか」
徹君がマフラーを買わなかったことにホッとする。まあ、高校生からしたら少し手が出しづらい値段だということは何となくだが想像出来た。だからこそ内緒でプレゼントしようと思ったのだから。
また徹君から手を繋がれれば、2人で歩く。何だか先ほどよりも緊張していないのは、この状況に慣れたとでもいうのか。ダメでしょ、と自ら苦笑しつつも上の階へと行けば照明が一気に暗くなる。
「わー、結構広そう」
「フロア丸々だからね。ほら京香ちゃん少し暗いから足元気を付けて」
「う、うん、ありがとう」
キョロキョロ見渡していると、グッと徹君に引き寄せられて優しく囁かれて……