第7章 一寸光陰 ーoikawaー
結局、支度が出来たのは待ち合わせ時間10分前で。
服装に悩み、シフォン素材で裾にフリルのついた白いシャツに白のダメージジーンズ。今流行りのテロンチと呼ばれるベージュの上着を羽織って完成。
じっくりと化粧をする時間もなかったので、薄めのメイクをして家を飛び出した。
我ながら女子力というものが全くないなと思う。
最寄りの駅まで軽く走ればタイミング良くきた電車に飛び乗る。そして徹君に、今電車乗ったから後15分程で着きますと連絡をした。
到着時間を考えれば10分程の遅刻だ。
軽くではあったが走った為、服の乱れと呼吸の乱れを落ち着かせようと深く息を吐いた。大学から帰って支度をして、10分の遅刻なら我ながら頑張ったよと一人頷くが、待たせてしまって申し訳ないなあと俯く。
順調に電車は進み、待ち合わせ場所の駅に着いた。
さて、徹君はどこに居るのだろうかとキョロキョロしながら有名な待ち合わせスポットへと向かえば、何やら女の子たちが群がっている。
…もしかして…
その人だかりに近付けば、甘ったるい黄色い女の子たちの声に混ざって聞こえてきた満更でもなさそうな男の声。
やはりこの中心にいるのは私を無理矢理デートに誘った張本人。
どうやって声をかけようかなと悩んでいれば、女の子たちとの会話が聞こえてきた。
「ねえ、もう来ないんじゃない?私たちとご飯食べに行こうよ」
「ごめんね、来るまで待ってるって約束したからさ。それに俺から誘ったデートなんだよね。悪いけどその子以外興味ないんだ」
「でももう30分以上待ってるじゃない。すっぽかされたのよ」
「それはないかな。どんな小さなことでも守ってくれる子だから…それ以上その子のこと悪く言ったら流石の俺も怒るよ?」
「な、なによ…ちょっとカッコイイからって調子のってんじゃないわよ!」
段々と徹君に絡んでいた女の子がヒステリックになってきたようで、手を振り上げたのが見えれば慌てて掻き分けてその手をパシッと掴む。
女の子はビクッとして此方を睨んでいるが、徹君に何もなくてホッとした。
「私の彼氏に何か用?」
「っ…!」
にっこりと微笑んで、掴んでいた手を離してあげれば悔しそうな顔をして女の子たちは走ってその場から立ち去ってしまった。
私そんな怖い顔したかな、なんて考えながら徹君を見れば目をパチクリとさせていた。