第1章 合縁奇縁
どうしたのかと振り返ると、にこっと笑った顔で手招く菅原君。その笑顔に首を傾げてからBチームの円に戻ると、両サイドに居る菅原君と縁下君から肩に腕を回された。
所謂、円陣である。
それを見ていた日向君から、「ずりぃいい」と言われていたことや影山君と澤村君からのジトッとした視線には気づかなかったのだが。
「え、わ、私も入っていいの?」
「何言ってるんですか!真澄さんもBチームです」
「そうだべ。よし今日こそはAチームに勝つぞ!真澄さんから気合の入る一言!」
戸惑う私に、縁下君が答えてくれた。
他のメンバーも頷いてくれている。
月島君は円陣が嫌そうだけど。
そして菅原君からの言葉にますます戸惑ったが、ここまで初対面の私を受け入れてくれたことが凄く嬉しくて期待に応えようと思って息をひとつ吐いた。しっかりと両サイドの菅原君と縁下君の肩に腕を回す。
「大丈夫、君たちなら出来る。いつでもレギュラー奪ってやるぞって、ビビらせてやんなさい!」
「「おーっす!」」
ひとりひとりの目を見ながらそう言えば、高校生らしい元気のいい声に私は自然と笑顔になった。
コートに入っていく姿を見送れば、武田先生の隣に立つ。
「だいぶ彼らに懐かれたみたいですね」
「ふふ、ここの子たちはみんな素直で向上心のあるすばらしい部員たちですね」
「ありがとうございます。だからこそ僕は彼らを勝たせてあげたい」
「ええ、わかります」
――私も、烏野に進学していたら何か変わったのかな・・・
武田先生と話していると、余分なことまで思い出してしまう。
不思議だな、烏野って・・・
でも、今更もしもの話なんてしても時間が戻るわけではない。
ビビらせてこいなんて言ったんだからしっかりと見てあげないと、と私はコートへと意識を向けた。
成田君がスパイクを決めて、山口君のサーブ。
私まで緊張してきた・・・山口君を見つめると、バチッと目が合った。私が安心させるようにと微笑んでから頷くと、山口君も頷いてくれた。
トスの上げ方、足の踏み込み、打ち方。
集中して見ていれば、山口君のサーブがスローモーションのように見える。
うん、上出来!
山口君から放たれたサーブは、先ほど同様澤村君の方へ。
しかし、レシーブで構えている彼よりも手前に曲がれば、そのまま反応出来ずにコートへと落ちた。