第6章 緊褌一番ー5日目ー
「みなさん起きてください着きましたよー」
バスが停まれば車内に武田先生の声が響く。
すんなりと目を覚ました部員は各自思い思いに伸びをして、眠たそうに目を擦りながらバスから降りる準備を始めたようだ。
「飛雄君、烏野に着いたよ。ほらバス降りるよ、起きて」
未だに眠っている飛雄君を起こそうと、ゆさゆさ揺らす。小さな声を漏らすものの、目は開けてくれなくて今度は肩を叩く。
「影山がここまで起きないって珍しいな」
「え?そうなの?」
「合宿中は朝早くから起きて、ロードワーク行ってたから疲れが出てるんだろう。
…でも、いつまでも京香さんの肩を借りてるのは感心しないな。ほら影山いい加減起きなさい」
ひょっこりと前の席から顔を出したのは孝支君と大地君。2人がかりで飛雄君を揺らしたりして、やっと起こすことが出来たようだ。しかし、寝ぼけているのか目が虚ろ。
「ほら田中!西谷!お前たちも起きろ!ミーティングするぞ」
飛雄君が目を覚ましたことを確認した大地君は寄り添って寝ている夕君たちの方へと行ってしまった。
「影山ー全くお前はーズルいぞー!」
孝支君はというと、少しムスッとしながらも寝ぼけている飛雄君の頬に手を伸ばし、むにーっと頬を伸ばし始めて。意外と伸びる頬に吹き出せば、それを見ていた私も我慢出来なくて笑ってしまう。
「いへぇっす…」
漸く意識がはっきりとした飛雄君は、孝支君に頬を引っ張られ私にも笑われ、不機嫌な表情。また眉間に深い皺が刻まれている。
しかし先輩相手だからか、孝支君だからか。無理矢理手を振り払おうとはせずに痛いと訴えるだけであった。きっとこれをやったのが翔陽君あたりなら大喧嘩に発展しただろう。
「ずっと京香さんの隣で、肩借りて寝てたんだ。このくらいは報いを受けろー」
思い切り引っ張って勢いよくその手を離した孝支君。飛雄君の頬は少し赤くなっていて、痛かったのか頬に手を当てている。
「ほらミーティングするべ、早く降りてこいよ」
「っす」
気が済んだのか、孝支君は荷物を持ってバスから降りていった。私も降りる支度しないとと思えば固まった身体を伸ばす。
「チッ…せっかくのチャンスだったのに俺は…」
隣では飛雄君が何て言っているかまでは聞き取れないものの、何やらぶつぶつと呟いている。