第6章 緊褌一番ー5日目ー
「金田一、その…次は負けねえ。勝つのは俺…たちだから覚えてろコラァ」
「うわっ、ちょ、飛雄くっ」
たどたどしく発せられた言葉、捨て台詞のように言い放った飛雄君はグイッと私の手を引っ張ってバスに乗り込もうとする。
チラッと金田一君を見れば、何やら驚いているような表情で。
「影山が……やっぱり"たち"って…」
聞き取れたのはそんな呟き。
やっぱりってことは前も"俺たちが"って言ってたんだね。中学の時の飛雄君からはまるっきり想像出来ないから、金田一君からしたら悔しいのかな。何だかんだ言っても、元チームメイト。切ろうとしても切れない絆ってあるんだよねと引っ張られながらも頷いた。
バスの中に入って窓側の席に座らせてもらい、隣に飛雄君がドカッと座った。照れているのか何なのか、眉間に皺を寄せて未だに口元がもぞもぞとしている。
「飛雄君、ちゃんと言えて良かったね」
「っす…」
そんな飛雄君に微笑むと、恥ずかしそうに顔を俯かせてしまった。
「影山!」
バスの外からそんな声が聞こえたので、視線を外へと向けるとそこには金田一君。慌ててバスの窓を開ければ飛雄君の肩を叩いて金田一君の方を向かせる。
「前にも言ったけど、お前が変わったからって仲直りするつもりはねえしずっとぶっ潰してぇ相手なのは変わんねえ!お前らを叩きのめすのは俺たちだから…
……だから、うちと当たるまで負けんじゃねえ!」
「金田一君…」
「…おぉ」
本当にいい子たちばかりだ。思わず嬉しくなって金田一君に手招きすれば窓から身を乗り出して手を伸ばす。左手は相変わらず飛雄君に掴まれているままだから落ちることもないだろう。
素直に近付いてきてくれた金田一君の頭を撫でて、「カッコいいよ金田一君」と微笑むと忽ち顔を赤くさせてしまったが。
「あー!金田一ズルい!京香ちゃんに撫でてもらってる!」
「お、及川さんっ」
「うきゃっ」
金田一君の向こうから復活したらしい徹君が走ってきて。ビクッと肩を震わせた金田一君、やはり先輩だから緊張するのかなと思っていたら思い切り引っ張られた左手。
いきなりのことで驚いて変な声を漏らしてしまったが、少しバランスを崩しながらも、ストンと座席に座らされれば私を庇うように飛雄君の腕が伸びてきて、無言のままピシャリと窓が閉められた。