第6章 緊褌一番ー5日目ー
「今年こそはさー、全国行きてえなってマジで思うんだ」
暫く貴大君と話しているといつの間にか話題はバレーへ。やはり彼らの今一番大切なことは目の前の春高へ出場することなのだろうと改めて感じた。
「今の青城なら不可能ではないと思うけど…」
「俺らも力つけたとは思うけどさ、やっぱりあと一歩届かねえんだよな。俺は大学進学するつもりないし、これがバレーに打ち込めるの最後かもしんねえから…」
「貴大君大学行かないの?」
「おう、美容の専門行くつもり」
「美容か…なんか貴大君らしいね」
「はは、だろ?京香さんの結婚式でヘアメイクやってあげるよ」
「いつになるかわかんないけど、その時はお願いね」
ニシシと笑う貴大君。私はこれからもみんなバレーと関わっていくものだと勝手に思い込んでいたから、これが本当の最後になるのだという言葉に胸が締め付けられるように痛くなった。
「オイ!花巻!いつまでサボってるつもりだよ」
「うげっ岩泉に見つかるとは…んじゃ俺は部屋に戻るよ。京香さんも戻ったら?」
「あ!そうだ私も戻らなきゃ」
入り口から大きい声がしたなと思えば、手を組んで眉間に皺を寄せてる一君で。私も潔子ちゃんたちに任せっきりだと慌てて立ち上がれば2人と共に部屋へと戻った。
部屋のドアを開ければ既に殆ど片付いている状態で。
「ごめん任せっきりにしてて!」
「ううん大丈夫。あと少しで集合時間だし、荷物まとめたら?」
「そうする。あーあ、潔子ちゃんたちと毎日一緒にいれなくなるのかあ…」
「また練習見に来てくれるでしょ?」
「うん、時間あったら烏野行くよ」
「待ってる」
「私もっ!待ってます!」
鞄にジャージやらを詰めて、忘れ物がないかと辺りを見回した。
潔子ちゃんに待ってると言われてしまえば、何がなんでも時間を作って烏野へ行くしかない。仁花ちゃんにも同じように言われてしまえば口元が緩む。なんて可愛いんだろう。
暫くしてトントンとドアをノックする音が聞こえたので返事をすると、どうやら武田先生が呼びに来てくれたようで。
私たちは各々の荷物を持てば、お世話になりましたと部屋を出て部員たちが待っているであろうバスの方へと歩いた。