第6章 緊褌一番ー5日目ー
私がポケットに入れていた拾った紐をテーブルの上に置けば、大地君の目が大きく見開かれた。その反応を見て、ゴミだと思って捨てなくて良かったと内心ホッとした。
「京香さんこれどこに…!」
「んとね、そこに落ちてたの。誰かの落とし物かなって後で聞こうかと思ってたんだけど…良かった」
「やっぱり食堂だったんですね。あと探してないとこ此処だけだったので…」
本当に大切そうにそのミサンガをギュッと握り締めた大地君。妹さんのこと大切にしてるんだなっていうことが凄く伝わってきて。確かにこんなお兄ちゃんが居たら応援したくなるよね、と納得出来る。
「妹さんは幸せだね、大地君がお兄ちゃんで」
「…京香さんの兄にはなりたくないですけどね」
「ええっ!何それ酷くない?!」
少し間が空いてからそう言った大地君の言葉にショックを受ければ、「どーせ私はめんどくさいですよー」と軽く拗ねる。
すると、あははっと声を出しながら笑い始めた大地君。
「す、すみません。京香さんが可愛くて…」
「む。今更フォローしたって遅いんだからねー」
「いやいや、フォローじゃなくて…」
そんなにおかしかったのか、遂には目元を拭い始めた大地君。めんどくさいと言われた挙句、涙が出るほど笑われて許せるほど私の心は広くない。
ムスッとしていると、大地君のおっきな手が此方へ伸びてきてぽふっと優しく私の頭に乗ればそのまま優しく撫でられる。
「こ、子ども扱いしな」
「京香さん」
子ども扱いしないで、と言おうとしたのを遮られ目線を彼へと送ると薄く微笑んでいる大地君。まるで全てを包み込んでくれるような、そんな表情。
真っ直ぐに見つめられて、バチッと目が合えばドキドキしてしまい大地君のことを見ることができなくなり、思わず目をそらす。
「俺は口下手なので、うまく言えるかわかりませんが…確かに京香さんは俺より歳上だけど、ちょっと抜けてるとこがあると思います」
大地君からのストレートな言葉はグサッと私に刺さってくる。直球ど真ん中ストライクだ。若利のスパイクの標的となって全身に浴びるような…
大地君から言われるなんて、私立ち直ることが出来るのだろうか。合宿中の数々の失敗が蘇ってきて思わず溜め息が溢れた。