第6章 緊褌一番ー5日目ー
暫く背中を撫でていれば、落ち着いてくれたようで。ゴシゴシと目元を拭ってから「すみません」と小さな声が聞こえたのでゆっくりと身体を離す。
「仁花ちゃんはこれからだよ、これからもっとバレーと関わって色んな人と出会って別れて…楽しいことばかりじゃないけど、どれもきっと仁花ちゃんの糧になる」
「はいっ」
「よしよし。やっぱり仁花ちゃんは笑顔が可愛い」
にこりと笑顔になってくれた仁花ちゃんの頭を撫でてあげれば、片付けが終わったらしい潔子ちゃんが此方へ来た。
「向こう終わったけど。こっちはどう?」
「あとちょっとかな。この一角で終わるから、2人とも私たち使ってた部屋の掃除を頼んでも良いかな?」
「じゃあそうさせてもらうね。仁花ちゃん行こう」
「はい!京香さんお願いします」
任せなさいと微笑んで2人を見送れば、残った場所の掃除を再開する。すると、椅子の下に何かが落ちているのに気付いて手を止めた。
「これ、何だろう…紐?」
「あ、いたいた。京香さん」
「ん?大地君?」
紐のようなものを拾いあげて、誰かの落とし物なのかゴミなのかと考えていると食堂のドアが開いて、とりあえずそれをポケットへと入れる。名前を呼ばれて振り返ると少し息を切らしている大地君が居て。
「今ちょっと探し物してまして…さっき清水に聞いたら食堂に京香さん居るって聞いて」
「うん、あと少しでここの掃除終わるから…」
とりあえず座ったら?と近くの椅子をひけば、そうしますと微笑んでくれた大地君。
走り回って探すほど大事なものなのだろうか。
話が始まる前に掃除用具を片付けてしまおうと、大地君に一言断ってから箒とちりとりを片付けてから大地君が座っている側に座る。
「お待たせしました。んで、探し物って?」
「大したものじゃないんですが…足につけてたミサンガが切れたようで。妹が作ってくれたものなんです」
「ミサンガ…切れたってことは、大地君のお願いが叶うかもね。どんなやつ?」
「ええ、だと良いんですが…お守りのようなもので。うちのユニホームみたいな黒で…」
黒い、ミサンガ。そこまで考えてからハッとした。そういえばさっき紐みたいなの拾ったと思い出せばポケットを探る。
「大地君それって、これじゃない?」