第1章 合縁奇縁
武田先生がBチームのみんなを私の元へ集めると、みんな不思議そうな顔をしている。
そりゃ当然だよね。
いきなり現れた他校の元マネージャーのもとに集まって何をするんだって思うよね。
あ、月島君にいたってはなんか嫌そうな顔してる。
それに気づいた山口君がなだめようとしているけど・・・
「さっきのセット見せてもらって思ったこと、まだまだ未熟なところがたくさんある。・・・でも、ちょっと私が手助けしてあげる。Aチームに勝ちたいならば、話を聞いてくれる?」
「Aチームに勝つ・・・!」
「・・・あのっ、俺勝ちたいです!」
「うん、よし!山口君ちょっとこっちおいで」
私がみんなの目を見ながら話せば、戸惑っているような表情になる。それも想定済み。勝ちたい気がないならば私は手助けしたりしない。
すると、山口君が私の気持ちに答えてくれた。
きっと1年の中で自分だけレギュラーになれてないのが悔しいのだろう、闘志を帯びた目に頷けば山口君を連れて少し離れたとこまで歩く。
「山口君はあれだよね、ピンチサーバーとか担ってる?」
「えっどうしてそれを・・・」
「さっきの試合見てわかったの。ジャンプフローターサーブ。あれのコツ教えてあげる」
最初は戸惑っていたような表情だったが、私が真剣に教え始めると彼の表情も真剣になってくる。
凄くいい表情。向上心がある、彼はこれからぐんと伸びる。
私はボールを使って簡単に今の山口君のサーブの仕方と、ジャンプフローターサーブに大切なトスの上げ方、踏み込み、手を振りぬかないことを丁寧に説明した。
「あとは練習あるのみなんだけど・・・ボールに触れたとき強い力だとぐぐっと伸びるし、弱いと手前に落ちる。そのコントロールまで出来るようになったら、これは山口君の武器になる」
「俺の・・・武器に・・・」
「うんそう、だから諦めずに練習してみて?必ず山口君なら自分のものに出来るから」
私の説明を理解してくれたらしい山口君、にっこりと微笑んで背伸びをすれば手を伸ばして彼の頭を撫でる。
照れくさそうな声を上げたかと思えば顔が赤くなっていて、ごめんごめんと山口君の頭から手を退ければ、行こうかと此方を見ていたBチームの面々の元へと戻った。
私が山口君の頭を撫でた時にどこからか「山口ィイイイ」という怨念のような声が聞こえたのは気のせいであると信じたい。