第1章 合縁奇縁
「ええ、凄いですね!日向君を見たときに跳躍力と瞬発力が凄いなって思ったんですがここまでスピードもあるとは・・・影山君のトスも精密で・・・烏野には良い武器がありますね」
「そうなんですよ。でも・・・」
「でも?・・・あ」
予想した以上の二人のバレーに興奮した私の様子に、武田先生は今一度嬉しそうにしていたが目線をコートへと向けると困ったような表情になった。
不思議に思って私もコートへと視線を戻すと、影山君のトスが日向君を大きく越え、自コートへとボールは落ちていた。
「「あ゛」」
「・・・なるほど、成功率はまだ低いってことなんですね。でも、成功率を上げる術なら教えられるかもしれません」
「え?成功率を上げる術ですか?・・・真澄さんが?」
「あっ、いや、えっと・・・ほら私バレーと関わっているの長いですから」
日向君と影山君から、しまったという声が聞こえれば、まだこの速攻は成功率が低いのだと察することが出来た。
咄嗟に出てしまった私の言葉を聞き漏らさなかった武田先生が不思議そうに見てくるので、慌てて誤魔化すように笑えばまたコートへと視線を送った。
次は山口君のサーブ。
あれは・・・ジャンプフローター・・・?
うーん、あれもまだ未完成か・・・惜しいとこまではきてるんだろうけど。
「武田先生、Aチーム+月島君はレギュラーで、Bチームはベンチ。で合ってますか?」
「凄いですねその通りです。どうしてわかったんですか?」
「私のカン、ですかね。あの、もしよければ試合の休憩時に・・・」
すぐにどっちがレギュラーなのかはわかった。
でも決してBチームが劣っているというわけではなくて、少し手を加えればレギュラー陣を追い詰めることが出来るのではないかというくらい。
そこで私は武田先生に、試合の休憩時Bチームへのアドバイスを行っても良いかと聞いてみた。
一瞬驚いたような顔をしていたが、すぐにまた笑顔になってお願いしますと言ってくれた。
山口君にはジャンプフローターのコツ、月島君にはブロックかな。菅原君はトス、縁下君木下君成田君はスパイク。
自分の中で誰にどんなことを言えば伸びるのかを考えていると1セットが終わり、休憩になった。
「5分休憩です。Bチームのみなさんちょっと真澄さんのところへ集まってください」