第6章 緊褌一番ー5日目ー
コートサイドへと戻り、青城1年生に礼を言って一緒に用意する。まずはレギュラー陣のドリンクとタオル。それが終わればBチームのを。
用意が済み一息つけば、救急箱があるところでテーピングしている部員の姿が視界に入ってきた。
ごめん、またちょっとお願い。と言えば其方へ駆け寄る。
「どうしたの?テーピング私やろうか?」
「あ…お願いしてもいいですか。俺、自分でやるの下手で…」
「うん任せて。はい、手を出して」
そこにいたのは忠君。私が声をかけると少し照れくさそうに笑ってからテーピングを差し出したので頷いて受け取る。
「そういえば忠君、そろそろサーブの意識を変える時だよ」
「サーブの意識…ですか?」
「うん、入るか入らないかじゃなくって、どこに落とすか。それを意識していかないと君の武器は通用しなくなる」
忠君の指にテーピングを巻きながら、先ほど思ったことを伝える。
まだジャンプフローターサーブを身に付けてからあまり時間が経ってない為、彼には難しいことかもしれないが…
でもそれがコントロール出来るようになれば立派な武器だ。ジャンプサーブも厄介だが、ジャンプフローターサーブもまた厄介なもの。
テーピングが終われば、黙ってしまった忠君を見つめる。
「大丈夫、君なら出来る。ここずっとサーブを練習してきたんでしょ。まだ時間はあるから…完成させよう」
「…はいっ!」
私が微笑むと、いい返事をくれた忠君。頑張ろうと頭を撫でればわたわたとしていて。またそれが可愛らしくてクスクスと笑っていれば、背後に人の気配が。
「山口何してんの。行くよ」
「ごめんツッキー!今行くね!京香さんありがとうございました」
「いいえ、引き止めちゃってごめんね。行ってらっしゃい」
どうやら忠君を迎えにきた蛍君のようで。声をかけると、踵を返すようにまたコートの方へと行ってしまった蛍君の後を追うように走って行った忠君を見送る。
ピピーっと再び笛が鳴る。ゲームが終わったようだ。
テーピングを急いで片付け、全てを1年生に任せるわけにもいかず、ちゃんと働かないとと思えば青城部員たちの方へと急いだ。