第6章 緊褌一番ー5日目ー
ピピーっと笛が鳴る。
どうやら次のゲームが開始されるようだ。
「岩泉さんたち!始まりますよ!」
「おう、ほら行くぞクソ川」
「京香さんありがとな」
「ううん、力になれて良かった。頑張って!」
金田一君が一君たちを呼びにきたらしい。一君は未だに沈んでいる徹君に一言声をかければスタスタとコートの方へ歩いて行ってしまった。貴大君から礼を言われ、声援を送れば一静君からは頭を優しく撫でられ。また2人もそのままコートへ。
…まだ動かない徹君。
徹君がここに居たらゲームが始まらないし、と思って隣にしゃがんでそっと頭を撫でてやれば漸く顔を上げた。
「徹君、ゲーム始まるからコート行こう?」
「…俺、自分でも訳わかんないの。京香ちゃんが岩ちゃんやマッキーたちと話してるの見ると苦しくて」
「……」
「京香ちゃんは俺のなんだからね!って大声で言って抱き締めて閉じ込めたい…はは、こんなこと言われても困っちゃうよね」
「徹君。ありがとう。今は気持ちだけ、受け取っておく」
徹君の顔が辛く歪む。こんな表情させたいわけじゃないのに、なんて言葉を掛けてあげれば良いのかわからない自分に苛立つ。
私がそっと徹君の手を握ってあげれば、歪められた表情は忽ち驚いたような表情へと変化して。それを間近で見れば、思わずクスリと笑ってしまう。
「私は逃げないから…今度こそ若利ブッ倒すんでしょ?」
「京香ちゃん…そうだね。うん、今度こそ俺たちが全国へ行く」
「うん、それでこそ徹君。ほら、そろそろ行かないと一君に怒られちゃうよ」
「…げっ」
「げっ、じゃねえだろ!いつまで待たせる気だ!」
「痛っ!毎回殴るのやめて!口で言えばわかるから!」
やっと笑顔になってくれた徹君。私がコートへと目線を向ければ、既に青筋を立ててる一君が側まできていて。
一君に殴られて涙目になりながらも、ゆっくりと立ち上がった徹君の顔はどこかスッキリとしているようで。
「京香ちゃん、俺のバレー見て惚れてもいいからね」
「ふふ、はいはい。頑張ってね」
「もう!俺本気で言ってるんだからね!ちょっと、岩ちゃん引き摺らないで!」
ウインク付きで言ってきた徹君にクスクスと笑っていれば、一君に引き摺られてコートへ。
私も2人に続いてコートサイドへ向かった。