第6章 緊褌一番ー5日目ー
最終日はお昼までの練習予定なので、アップを済ませてすぐにミニゲームとなった。
私たちマネージャーは相変わらず動き回っていて。ゲームが終わった部員たちにドリンクとタオルを渡す。私は青城の1年生にも手伝ってもらったから、時間を見ながら指導も行っていた。
「京香さん」
「ん?貴大君と一静君、一君まで…どうしたの?」
「ちょっとコツ教えて欲しいことあってさ」
青城レギュラー陣が休みの回、青城Bチームのドリンクを用意していると3人に声を掛けられた。
ちょっと待って、と言って側にいた1年生にドリンクを頼むと3人が居る方へ向かう。
ミニゲームをしている場所から少し離れた体育館の隅。
バレーボールをクルクルと指先で器用に回転させながら待ってくれていた貴大君たちは、私が近付くとその手を止めた。
「ごめんお待たせ。コツって何の?」
「ジャンフロの捉え方」
「オーバーで捕まえるってのはわかってるんだけどさ、どうも乱れるんだよね」
「なるほど…ん、わかったちょっとやってみよっか」
忠君のジャンプフローターが成功し始めているからか。ミニゲームでも何度か乱されている場面を目撃している。
早々に手を打っておこうということね。レシーブの上手い貴大君と一君ならすぐに安定するだろう。勿論、一静君も。
軽く説明した後に、私がジャンプフローターサーブを打ってみる。
やはり私が言ったコツを掴むのが早い。何球か打ったところで綺麗にレシーブ出来るようになっていた。こりゃ忠君はもう一歩先へ行かないと武器として使い物にならないかもしれない。
今はまだ、サーブを入れることに集中している。代表決定戦までにどこを狙うかにもっていかなければ…
「3人とも何俺に内緒で京香ちゃんと練習してるの!ズルい!」
「及川、監督に呼ばれてたから丁度良いって思ったんだけど…」
「ちょっとマッキー!丁度良いって何さ丁度良いって!」
「うっせぇんだよ!クソ川!」
3人ともきっちり返せるようになった頃、此方へ走ってくるような音と共に聞こえてきた声。1人だけ置いてかれて拗ねているような徹君だ。
貴大君のボソッとした意地悪に騒いでいると、毎回の如く一君からの鉄槌が。見事、拳骨での一撃で徹君は沈んでいった。