第5章 共同戦線ー4日目ー
「ノヤっさーん!」
「おう!龍、今行く!」
夕君の花火が消え、私の花火だけがパチパチと輝いている。
少し離れたところから夕君を呼ぶ声が。この呼び方をするのは龍之介くんだろう、クルッと顔だけ振り返った夕君は手を振って応えた。
「京香さん、俺、必ず牛島さんのサーブもスパイクも拾いますから!だから見てて下さい!」
「夕君…うん、わかった。それまでも気を緩めちゃダメよ」
「うっす!」
私の花火に照らされた夕君は凛々しい表情で。私の言葉に大きく頷けば、花火ちゃんと楽しんで下さいよ!と言って龍之介君の方へと走って行ってしまった。
夕君が走って行くと同時に消えた花火。
バケツがある所へ行けば水の中へ入れる。ジュッという音を立て花火は完全に消えた。
周りを見渡してみれば、各々楽しんでいるようで。
翔陽君と龍之介君たちは花火で字を書いてはしゃいでいるし、徹君は花火を持った貴大君に追いかけられて騒いでいるし、旭君や一君たちは線香花火で競っているみたい。
少し離れた階段に腰掛ける。
もう秋の夜風は少し肌寒いくらいで、でも彼らを見ていると何だか暖かくなってくるようでその様子をジッと見つめていた。
ザッザッ、と此方へ歩いてくるような音が聞こえて顔を上げた。
「京香さん、隣…良いっすか」
「うん、どうぞ」
暗闇の中、誰だかわからなかったのだが座れるように少しズレれば、彼はストンと隣に座った。
近くにきてやっとわかった、漆黒の髪、鋭い目付き。感情表現が苦手な男の子。
私に声を掛けてくれたのは、飛雄君だった。
「花火、持ってきたんで…その、やりません、か…」
「持ってきてくれたの?うん、やろやろ」
差し出された数本の花火とライター。微笑んで一本受け取れば、少し安心したような飛雄君。
私が花火にライターで火をつけて、飛雄君との距離を詰める。
「はい、火もらって?」
肩を少しピクリとさせた飛雄君は、小さく頷いて私の花火に近付ける。すぐに火はついて、一気にその場が明るくなった。