第5章 共同戦線ー4日目ー
「すみません、及川が迷惑かけて」
「一君、大丈夫。いつも一君が助けてくれるから」
そこまで気を使わなくていいよ?と微笑めば、少しだけ頬を赤く染めた一君はあざっすと小さく礼を述べてくれた。
「私ね、青城と烏野がこんなに仲が良いの見てると嬉しいよ」
「ここまで烏野と話したことなかったんですが…京香さんのおかげです」
「ん?私の…?」
花火の準備をしている部員たちに視線を移す。
3年は3年で集まり、先程までくん付けで呼び合っていた互いも呼び捨てになっている。
両手に水が入ったバケツを持っている翔陽君を手伝っているのは金田一君。飛雄君ともまだ少しぎこちないが、話している。中学時代のわだかまりが少しとれただろうか。
その後ろでは、無気力組とでもいうべきか、蛍君と国見君がめんどくさそうにしているのを忠君が手を引っ張っている。
何とも微笑ましい光景。
自然と笑みが溢れるも、一君の言葉に視線を再び隣へと向けた。
「そうです、及川がこんなこと言い出したのだって。烏野と俺らが話すきっかけだって、京香さんなんすよ。」
「そう、なのかな…そう言ってもらえると嬉しいな。私がこの合宿に参加させてもらった意味があるというか…」
「そういえば、及川あれから京香さんのサーブ練習してるみたいです。威力重視のやつ」
「あ…そっか、練習してくれてるんだ。あの時ノートを徹君に渡してくれたの一君だよね、ありがとう」
再び微笑めば、照れ臭そうに頭を掻く一君。
ちゃんと徹君のこと見て支えてくれている。口調はキツイしすぐに手が出るけども、徹君のこと一番考えているのは彼なのだろうなと感じた。
「岩泉ー京香さん。何2人で話してんの?」
ひょっこり現れたのは、もう1人のお母さ…
失礼。ニコニコとしているものの、少しオーラが怖いようなそんな表情の孝支君だった。