第5章 共同戦線ー4日目ー
「てめぇらいい加減にしろ!ボゲェ!」
頭を抱えてどうしようかと悩んでいると、背後から頼もしい声が聞こえた。この一喝は彼しかいない。
助かった、と振り返れば腕を組んで般若の如く怒っている表情の一君。やはり旭君はビビって縮こまっているようだが。
同じエースでこうも違うのか、と2人の顔を見比べる。
「クソ川てめぇが原因だ!澤村も菅原も相手にすんじゃねえよ」
「痛っ!岩ちゃんなんで俺だけ殴るのいつも!理不尽!」
「そうか、てめぇはもう一発殴られてぇのか」
「うぐ……」
ツカツカと固まっている4人の中へ入っていった一君。そして躊躇なく徹君の頭に拳骨をひとつ。
涙目になりながらも抗議している徹君に向けてまた拳を握った一君。それだけで徹君を黙らせるのは流石としか言いようがない。
貴大君はというと、要領がいいのか世渡り上手というべきか。ちゃっかり一静君の隣に避難していた。
悪い、と顔の前で手を合わせれば大地君や孝支君に謝っているみたいだ。素直な子たちでよかった…とりあえずは一件落着だろうか。
「京香さん京香さん!花火やりましょう!」
「うぇっ…花火?」
「及川さんがみんなでやろうと思って、さっきチビちゃんと飛雄とうちの部員たちに買い出し頼んでおいたんだ」
手にいっぱいの手持ち花火を抱えた翔陽君が満面の笑みで此方に走ってきた。私が首を傾げると、先程まで再びしょげていた徹君は、俺の手柄だと自慢するように元気を取り戻したようだ。
ナイス翔陽君!…もう一押ししておこうかなと思って、ありがとう徹君と微笑めばガバッと抱き締められた。
「ひぁっ、ちょ、徹君!」
「「及川何して…!」」
突然のその行動に私を含めた周り全員が動揺の声をあげた。
徹君本人は、ニコニコとして私を離せばバケツたくさん持ってきてと翔陽君に言っていて。
「お前ら、花火やるからバケツに水汲んでたくさん用意して。あ、渡っち監督か溝口くんにライター借りてきてくれる?」
「はいっ」
テキパキと指示している姿はやはり主将。
ふと、隣に誰かが立った気配がして、視線を隣へと向けた。