第5章 共同戦線ー4日目ー
「お、京香さん!」
「ちょっとお邪魔するね。みんなありがとうね」
「このくらい何ともないって!及川から聞いた時はちゃんと飯作れるか心配だったけどさ」
一静君の後ろにいた私を貴大君が見つけて手を振ってくれたので、そのまま青城3年のテーブルでご飯を食べる。
ニシシ、と笑うその後ろには烏野3年の姿があった。
「花巻君と松川君すげーな!俺たちが作ったんじゃこうはいかないべ」
「スガに作らせたら全て辛くなりそうで怖いよ」
「でしょでしょ!うちのマッキーとまっつん凄いでしょ!」
「クソ川てめぇが自慢すんなボゲェ!」
孝支君と旭君に絡んだのは、戻ってきたらしい徹君。いつものテンションに戻っているのを見ると、大地君あたりが慰めてくれたのだろうか。
クルッと振り返った一君の拳骨が徹君にヒットすれば、頭を押さえてしゃがみ込んだ。
「悪ぃないきなり」
「いやいや大丈夫。花巻君たち、凄く美味しいよ」
「だろー!まあ、烏野の2年とか手伝ってくれたしな。あいつの味付けは美味いな」
「2年…?」
「縁下だよ京香さん。うちで料理任せられるのあいつしか居ないんだ」
「成る程、力君かー!確かに上手そう」
いつの間にか青城3年だけだったテーブルに烏野3年も加わって大所帯になった。ネットを挟んでいつもピリピリとしている両校がこうやって仲良くご飯を食べているなんて…
「んぁ!俺の分は?ねえ岩ちゃん俺のご飯!」
「あ?知らねえよ自分で取ってこい!」
「嘘でしょ!岩ちゃん酷い!取っといてって言ったじゃん!」
「わかったとは言ってねえだろうが!」
「お、及川、俺の少し食べる?確かもうハンバーグなかったし」
「菅原クン…!岩ちゃんよりもお母ちゃん!」
「クソ川甘えんじゃねえ!」
徹君が復活すると一気にその場が賑やかくなる。孝支君が徹君に皿を差し出すも、一君に怒られてトボトボと料理を取りに向かったようだ。
その後ろ姿をみて、吹き出した貴大君に釣られて私も笑い出す。
旭君は徹君が殴られる度にビクッとして顔を青ざめていて、それを面白がった孝支君が、旭も岩泉に殴られたら強くなるべと背中を叩けば、首が取れるんじゃないかというくらい横に振って、一君から距離をとっていた。
その様子を間近で見ながら、また私たちは笑い合った。