第5章 共同戦線ー4日目ー
「先ずは、毎日練習お疲れ様。互いに切磋琢磨し合い、成長出来たのではないかな。今日の夕飯は両校主将からの提案でこのようなものになった。まあ…ハメを外しすぎない程度にやりなさい。後は及川、澤村君頼んだぞ」
入畑監督の言葉に何度か頷く。県内のライバル校だからこそ、対抗意識を燃やしてこの数日間で大きく成長出来たのだと思う。
まあ、色々と私がやらかして迷惑かけてしまったのだけれど。
素晴らしい選手たちと出会えた、私にとってそれが一番嬉しかった。みんなからの気持ちに悩んでいた時は、合宿に参加したこと少し後悔したけども、今は心から参加してよかったと思える。
入畑監督が下がり、代わりに徹君が前へと出る。
「あれ、澤村クン何してんの。早く」
「え、いや俺は…」
「何言ってんだよ大地!」
「そうっすよ大地さん!」
キョロキョロと辺りを見回した徹君は私の側にいた大地君を見つけたのか手招きしている。しかし本人は顔の前で手を振って遠慮しているようだ。
それを見かねたのは孝支君と龍之介君。
2人に背中を押された大地君は困ったように頭を掻きながらも徹君の横に並ぶ。
「みんな練習お疲れ様。うちと烏野の合同合宿ももう4日目、今日が最後の夜。色んな思い出が出来たと思うけど、一緒になんかしたのってないなーって思って澤村クンと話し合って先生たちから許可をもらいました。マッキー、まっつん持ってきて」
「へいへい。おい全部並べろー」
確かに青城と烏野で競い合うことは連日のようにしていたけども、共同で何かをやったことはなかった。
徹君の言葉のあと、貴大君の声が聞こえたと思ったら青城部員たちが何やら運んでくる。テーブルに並べられたそれらは今日の夕飯だろうか、良い匂いが充満した。
ゴクッと生唾を飲んだような音が聞こえて周りを見てみれば、目を輝かせて涎を垂らしそうな翔陽君と夕君。その後ろにいる飛雄君も同じような状態である。
「京香ちゃん!」
「清水、谷地さん」
食欲旺盛な高校生らしいそんな姿にクスクス笑っていれば、いきなり主将たちに名前を呼ばれてビクッとする。
仁花ちゃんなんて震え上がって私に抱きついてきた。
優しく頭を撫でてあげながら、何かと主将たちの方を向けばこの場にいる部員たち全員の視線は私たちの方へ注がれていることに気付いた。