第5章 共同戦線ー4日目ー
そのまま連れて行かれた先は、中庭。どうやらそこは学校の敷地内ではなく、合宿所の敷地内のようだ。
真ん中に大きなテーブルが一つと、その周りに小さめのテーブルが幾つかある。まるで立食パーティーのような、そんな感じ。
「あ、大地さーん!京香さーん!こっちですーっ」
名前を呼ばれて辺りを見れば、やけにテンションが高くなっている翔陽君がぴょんぴょん跳ねて手を振っている。
大地君に手を握られたまま、其方の方へと行けば烏野部員が集まっているようで。
「…澤村さん、京香さんの手もう離してもいいっすよね」
声が聞こえて前を見れば真っ黒い背中。ザッと私たちの間に立ったのは飛雄君のようで。私に背を向けるように立っている為表情はわからないものの、いつもより低い声は不機嫌そのもの。
半ば強引に離された手。もしかして、最悪喧嘩にでもなるのではと神経を尖らせる。
「飛雄ー!お前さっきのどこ置いたんだよー!」
「チッ…」
ピリピリした空気、遠くの方で徹君が飛雄君を呼んでくれたことで何事もなかったのだが。
「澤村さん、俺も…譲りたくないんで邪魔しますから」
ポツリと呟かれた飛雄君から大地君へと向けられた言葉。何事もなかったことに安心して気が緩んでいた私の耳には届かなかった。
「京香さん、これ何なのか知ってる?」
「潔子ちゃん。ううん、私もさっぱり…ただ連れてこられただけで」
「そう…」
呼ばれて振り返ればそこには潔子ちゃん。どうやら彼女にも知らされていないらしく、2人で首を傾げた。
すぐ近くには、夕君と龍之介君が番犬のように潔子ちゃんに近寄ろうとする男たちを威嚇している姿が見えた。
私たちが話しているのを、遠巻きに見ていたらしい青城部員たちが口々に「女神たち」だの「天使たち」だの噂していたことなど、当然知る由もなかった。
「みんな、揃ったようだな」
騒がしかった話し声も、静かになる。
その声を発したのは、青城監督の入畑先生であった。