第5章 共同戦線ー4日目ー
「男って…わかって」
「わかってないです。体格だって力だって俺たちの方が上なんですよ」
私の言葉を遮って、少し怒っているような大地君。
力の差は、合宿初日の腕相撲で嫌という程思い知らされたことを思い出した。一回戦で負けた孝支君にさえも、私は…
「あいつらがそんな強引なことするとは思えないので大丈夫だと思いますが、少しは警戒とかして下さい。心配でたまりません」
「はい…ごめんなさい」
「あ…すみません俺生意気に…」
しょんぼりとした私を見てハッとした大地君。慌てて私の頭から手を退かせば、罰が悪そうに自分の頭を掻いている。
退けられた手に、少しばかりの寂しさを感じた。
私が首を振れば口元に笑みを浮かべてくれた大地君。それに応えるように私も笑みを返す。
「そうだ大地君、さっきの練習ね…」
第一体育館での練習の様子を事細かに伝える。夕君のトスが少し上達したこと、各々との連携のこと。そして、シンクロ攻撃のリスク。
「詳しいことは言えないけども、ブロックは全てリードブロックじゃないってこと忘れないで」
「コミットブロック…」
呟いた大地君に私が頷けば、少し考えるような仕草をした後、わかりましたとまた主将の顔に戻った大地君。
そのまま大地君と話していると、ふと体育館にいる人数が少ないことに気付いた。
まず徹君が居ない。それどころか青城3年レギュラー全員居ない。
みんなでどこかで練習でもしているのだろうか?先程の烏野みたいに秘密の特訓?
いや、烏野は常に新しい攻撃を生み出している所だが青城は違う。基盤がしっかりと出来ていて、その上で個々の能力を最大限引き出している所だ。
ーー何か引っかかる…
「はーい!みんな準備出来たから練習終わりにしてー!あ、澤村クンそのまま京香ちゃん連れてきて!」
「あぁ、わかった!さ、行きますよ」
私が考えていると、勢いよく体育館の扉が開き、そこには徹君の姿が。
準備?何のこと?と動き出した部員たちを見て戸惑う私の手をとったのは隣にいる大地君。
促されるままに立ち上がり、何かあるのかと尋ねるも、まだ内緒ですと誤魔化され手を引かれるまま、大地君についていった。