第5章 共同戦線ー4日目ー
バタバタと走り回っている音がする。きっと龍之介君と夕君。二人の声と共に頼りないような、情けないようなと言ったら失礼だが、そんな声もするのでそれはきっと旭君。
そうなると、私の視界を遮っているのは孝支君か。
「孝支君…?そろそろ手…」
「だーめ。まだ田中服着てないべ。京香さんに男の裸見せるわけにはいかない」
「ふふ、私男子バレー部のマネージャーよ?目の前で着替えられてたから慣れてるのに」
「それでもダメなもんはダメ!」
若利とか全く気にせずに私の目の前でいつも着替えてるしなあ…なんて言おうとしたのだが、何だかややこしくなりそうなので大人しくしていることにした。
「田中!いい加減に服着ろ!大地に見つかっ」
「俺が、何だって?」
「うげっ…だ、大地…!」
孝支君が騒いでいる二人を宥めようとするものの治る様子はない。確かに大地君に見つかれば大目玉だと私も頷くが、シンと静まり返った体育館。…遅かったようだ。
視界が遮られていてもわかる、大地君が怒っていることが。
「第二体育館に居ないから探しに来たわけだけど。ほう、お前らは遊ぶほど余裕があるってこと?」
「あ、いや、大地さん…」
「言い訳はいい!さっさと練習に戻れ!」
「「す、すんませんっした!」」
体育館に大地君の怒号が響く。夕君と龍之介君は謝った後第二体育館に戻ったようだ、バタバタと騒がしい足音が聞こえた。
「あとスガ!」
「ヒッ、何だよ…!」
「お前はいつまで京香さんにくっついてるつもりだ!」
「あ…ごめん!」
「はぁ、ほら行くぞ…」
大きな溜め息をついた大地君。やっと視界が開ければ、眩しさに少し眼を細める。
大地君に怒られてしょんぼりしている旭君と孝支君の背中を叩いて、私に任せてと微笑めば一緒に第二体育館へ戻った。
「大地君!」
体育館に戻ってその姿を見つければ声をかける。振り返った彼の表情は落ち着いているようだ。私のことを認識するなり眉を下げた。
「あいつらが迷惑かけてすみませんでした」
「ふふ、大丈夫。龍之介君がああなったのは私がテンション上げちゃったから…」
「いや、すぐに騒ぎ出すあいつらが悪いんです。でも気を付けて下さいよ。俺たちは男ですから」
主将の顔から一転、私のことを心配するような大地君。
大きな手が私の頭を撫でた。