第5章 共同戦線ー4日目ー
午後のミニゲームをコートサイドからジッと見つめる。
マネージャーの仕事は任せれば良いと言ってもらえたので、選手たちの動きに集中した。今は烏野A対青城レギュラー。
ミニゲームとは言え、レギュラー陣同士の試合は見ていて力が入ってしまう。
あくまで飛雄君は新しい速攻を試してみる気はないのか、手の内を見せたくないのか。翔陽君がウズウズしているのがわかるものの、"飛雄君が合わせる速攻"のみを選択していた。
バチッ!とドシャットされたボールは大きな音を立てて烏野コートに落ちていた。青城レギュラーの勝ちである。
「大地君!ちょっと…」
ミニゲームが終わり、タオルで汗を拭きドリンクを飲んでいる大地君を見つけて手招きする。
少し不思議そうな顔をした後、ドリンクを持ったまま此方の方へきた大地君を見ればそのまま体育館の隅の方へ誘導する。
「どうかしました?」
「…心当たりがないわけじゃないよね?」
「あ…あれくらい大丈」
「バカ。今が一番大切な時期でしょ!主将が無理してどうすんの。ほら素直に手出して」
救急箱が置いてあるところまで来て、まだ誤魔化そうとしている大地君に怒れば眉を下げてから素直に手を出してくれたので、宜しいと微笑む。
テーピングを取り出せば、大地君の指先を固定する。
「いつから気付いたかって?」
「…はい」
「ふふ、コーチに徹して下さいって言われたんだから隅々まで見てるって。金田一君のブロックに入った時に、あれ指やったかな?って。はい、無理しちゃダメだよ」
「すみません、ありがとうございます」
何か言いたそうなその顔をチラッと見て、ズバリ言い当てると素直に頷いた大地君。にこりと笑顔を浮かべれば、京香さんには敵わないな、と笑いながらも手を握ったり開いたりして確かめている。
「癖にはなってないから大丈夫だとは思うけど、若利のスパイクは一君のより重いからね。変な手の出し方すると危険だから気を付けて」
「岩泉よりも、ですか…」
若利の名前を出すと緊張したような面持ちになった大地君。
しかし、ワンチが取れるかどうかは重要だ。私も真面目な顔をすれば大地君を見つめて頷いた。