第5章 共同戦線ー4日目ー
「スガ?何やってんだ?」
「あ、旭、大地!京香さん烏野のジャージ似合うよな」
肩を掴まれ、くるっと大地君たちが居るであろう方向を向かせられればそのまま私の肩をさり気なく抱いている孝支君。
徹君や貴大君は女の子に慣れているとわかっていたのだが、孝支君も結構慣れているのではないかと感じるようになってきた。
「あぁ、似合ってる。スガのジャージだからデカいけどな」
「うんうん、また清水さんややっちゃんとは違った綺麗さだね」
「大地はわかってないなー。彼ジャーっぽいのが良いんだろ!」
何度か頷いてくれた二人に照れ臭くなってくれば、一応ありがとうと礼を述べた。大地君に指摘されてしまえば自分の指先に視線を落とす。
大きいジャージは見事に私の掌を隠し、指先しか出ていない状態だ。捲ろうかとも思ったのだが孝支君のジャージなので思い留まった。当の本人は、この状態が良いんだと力説している。
「あー!菅原くんたち何してんのさ!京香ちゃんに黒は似合わないですー!」
「何言ってんだ、似合うだろ!って、及川何するんだよ」
「うぇ?ちょ、スト…ストップー!」
「お、おいお前たち…!」
目敏いのか何なのか、先程まで翔陽君に突っかかり一君に怒られていた徹君が此方に走ってきた。私の格好を見るなり、眉を寄せて私の制止を聞かずにジャージのファスナーを下ろしていく。
下に自分のジャージを着ているとしても恥ずかしすぎてぶっ倒れそうになる。
烏野ジャージを脱がされそうになっている私を奪い返そうと孝支君が徹君の手を掴むも、パワーの差だろうか。少し乱暴に黒いジャージを孝支君に押し付けた徹君は、自分のジャージを私に羽織らせた。
青城ジャージを羽織った私を見れば、うんうんと満足そうにしている徹君とは反対に、烏野ジャージを握り締めている孝支君の表情は不機嫌そのものだ。
「…はぁ、自分の学校ジャージ好きなのは良いけど…いい加減練習再開するよ!」
小さく溜息をついてから、青城ジャージを脱いで徹君に返せば、ほらほらと背中を叩いて駆け出した。
「はぁ、はこっちだよ。自分の学校ジャージが好きなわけじゃなくて、京香ちゃんを自分の色に染めたいってことなんだけど…ねぇ」
私の後ろ姿を見て、徹君と孝支君が苦笑しながら話していたことには気付かなかった。