第5章 共同戦線ー4日目ー
「後悔はしていません、って顔してる」
「…俺は烏野に来て、変われましたから…」
私がニコニコとしてそういうと、当たったのか驚いている飛雄君。そして少し恥ずかしそうにしながらも小さく肯定の言葉を伝えてくれた。
「うん、私もそう思う。良かったね!」
「っす」
「影山ぁ!全くお前って奴は…!」
「嬉しいじゃねえかコノヤロウ!」
「うひゃあ!」
いきなり私と飛雄君の間ににゅっと現れたのは龍之介君と夕君。どうやら私たちの会話を聞いていたらしい、花が飛びそうな程にこやかな笑顔を浮かべて両サイドから飛雄君の肩を組めば、腹に何度もパンチをしている。多分、加減して…
思わずビックリして変な声が出た私は、バクバクしている心臓を押さえながらそこから離れた。
「うん、やっぱりそのジャージ京香さんのイメージじゃないなあ」
すぐ近くで声がしたので其方の方を向けば、顎に手を当てて考え込んでいるような格好をした孝支君。
イメージじゃないって、そこまで似合ってないかなー?
なんて自分の格好を確認していれば、今度は笑い出した。
「ちょ、ちょっと笑わないでよ!」
「ご、ごめん…京香さん可愛くて。ちょっと試しにさ、着てみてよ」
恥ずかしくなって孝支君に抗議すれば、少し笑いながらも謝ってくれた。そしておもむろにジャージを脱げば差し出されたソレ。
着てみて、ってこれを?烏野のジャージを私が?
ジャージと孝支君の顔を交互に見ていれば、焦ったくなったのか私の背後に回った孝支君。
「俺のジャージだからその上からでも着れると思うよ」
ばさり、とジャージをかけられて着せ替え人形のように黒いジャージを着させられた私。そして孝支君は前へと回ればジッと見つめてくる。何だか恥ずかしくなってまともに顔を見ることが出来ない。
「あー、うん。似合ってる。やっぱり京香さんは白地ベースのジャージより色のついた方が良いな」
色んな角度から私を見る孝支君。何度も頷いた後でニカっと笑った。そういえば、俺以外のジャージ着てるから嫌だとか言っていたのを思い出す。これで彼の小さな嫉妬も治っただろうか。
このままずっと烏野のコーチだったら良いのに、彼の苦情混じりの小さな呟きには聞こえないフリをした。