第1章 合縁奇縁
―澤村side―
白鳥沢の元マネージャーだと名乗った女性、真澄京香さん。
武田先生の提案で試合を見学してもらうことになったのだが・・・
正直、清水と背格好は変わらないが可愛らしい雰囲気のこの女性が強豪校のマネージャーをやっていたなんて信じられない。
武田先生と烏養コーチの自己紹介のあと、俺達も自己紹介することになった。
俺の話を聞いてる真澄さんの表情は真剣だ。
何か探りでも入れられているんじゃないかというくらい。
そのまっすぐな瞳に俺は目線を外すことが出来なくなった。
俺の自己紹介が終われば、彼女の視線は隣のスガへと向けられる。ひとりひとり自己紹介しているのだから当然なのだが、なせだか悲しくなった。
――俺だけ見てほしい。
なんて自然と考えてしまっている自分に戸惑いながら、表情には出すまいと平静を装う。
田中と西谷の自己紹介がたどたどしいのはどうしようもないのだが、おかしそうに笑っている彼女を見れば安心したような気持ちになる反面、チクリと胸が痛む。
「どうした?大地」
「あ、いや、なんでもない」
「そう?ならいいけど」
何を考えているんだと首を軽く振れば、隣に居たスガが心配そうに俺を見てくる。
なんか変なんだ、とも言えるはずもなく、なんでもないと誤魔化せばあまり腑に落ちないような表情でまた前を向いた。
影山の自己紹介が終われば、何やら月島が突っかかっている。
「こらこらお前達、やめなさい」
「はーい」 「・・・っす」
「日向、自己紹介続けな」
またこいつらは・・・とため息をつけば二人の間に入ってやめさせた。
最後の日向に自己紹介をするように促せば、少し緊張しながらも無事に全員自己紹介を終えた。
「じゃあ試合始めるぞー、AチームBチーム変更なしだ」
コーチの一言でコートに入っていく。
真澄さんをチラッと見れば、先生と共にコートサイドへと歩いて行った。
「真澄さーん!俺のスーパーレシーブ見ててくださいね!」
「うん、頑張ってね西谷君」
「っ!!!龍!!」 「ノヤっさん!!」
「「女神だあああ」」
西谷からの声に笑顔で答えた真澄さん。
涙を流して抱き合う田中と西谷にため息をついてから注意すれば、俺も鼓動が早くなっているのを落ち着かせようと深呼吸をした。