第1章 合縁奇縁
―影山side―
練習の休憩中、いきなり日向が大声を出したから何かと行ってみれば、どこかで見たことのある茶髪の女の人が居た。
白鳥沢で出会ったことを思い出せば、どうやら偵察でもねえらしい。
しかも、俺と日向のバレーが見たいとか言ってきやがる。
白鳥沢のマネージャーじゃないってことには驚いたが・・・
数年前って言えば、白鳥沢が王者として確立した頃。
その頃のマネージャーには"勝利の女神様"と呼ばれる人が居たって記事を読んだことがある。
――もしかしたらこの人なのだろうか。
俺が白鳥沢を受験したもうひとつの理由。
"勝利の女神様"に会いてえ。俺のバレーを見て貰いてえ。
俺を、及川さんよりも強いセッターに・・・
そう考えていたらその女の人のことをジっと見すぎていたことに気づいて慌てて顔をそらした。
しかし、先生からの提案に驚いて顔を上げれば嬉しそうに女の人は微笑んでいた。
「っ・・・!」
その笑顔を見れば、一気に顔が熱くなる様に感じた。
何だよコレ・・・わけわかんねえ・・・
その顔を隠すようにまた俯けば、どうにかして冷まそうと体育館の中に戻った。
「王様、何顔赤くしちゃってるの」
「あ゛あ゛!?」
ぼそり、と上から降ってきた言葉に眉間に皺を寄せて顔を上げた。
くっそ、月島に見られたらしい。
クスクス嫌味を言いながら戻っていく月島の後姿を思い切り睨み付けてやった。
キャプテンから集合の声がかかれば、コーチと先生、そして先ほどの女の人の元に集まった。
なんか変にドキドキする。
さっきの笑顔が頭に浮かんでくる。
ほんと何なんだよ・・・!
「――ということで、少し見学してもらうことにしました。では、自己紹介お願いできますか?」
「あ、はい。みなさんのこと驚かせてしまってすみません!真澄京香と言います。元白鳥沢のマネージャーやってました。今日はいきなりだったのに見学許可ありがとうございます。よろしくお願いします」
そう自己紹介をすれば、また笑顔で軽く頭を下げた。
真澄京香さん・・・
それから先生、コーチ、3年生、2年生と自己紹介をして俺の番まで回ってきた。
「影山飛雄。1年、ポジションはセッターっす」
「あれ、王様もっとアピールしたほうがいいんじゃないの?」
「あ゛?うっせぇ月島ボゲェ!」