第1章 合縁奇縁
「わざわざ白鳥沢から・・・偵察、っすか?」
なんともいえない雰囲気の中、最初に口を開いたのはカゲヤマ君だった。
表情は険しく、やはり良くは思ってないのだろう。
直接彼とも白鳥沢に居たときに顔を合わせているためか、若利に向けるような睨みを私にも向けてくる。
「いや、違うんです。偵察とかじゃなくって・・・ただ日向君とカゲヤマ君のバレーが見てみたいなって思っただけで・・・」
「日向と影山のバレー、ですか?」
「はい、白鳥沢で見たときにピンときたんです。私元々そういうカンはあるほうなので気になっちゃって」
私が偵察ではないと弁明すると、日向君をなだめていた灰色の髪の黒子が特徴的な優しそうな男の子が口を開いた。
うん、と頷きながら説明するもののやはり居辛い。
みんなからの視線が痛い。
なんか後ろのほうで悶えているような男の子が2人ほどいるけれど気にしたら負けだろうか。
「でもどうして白鳥沢のマネージャーさんが?」
「へ?・・・あ!私白鳥沢のマネージャーじゃないんです!そもそも白鳥沢卒業したの数年前だし・・・」
「「えぇっ!!」」
今度は先ほどのレシーブがうまかった黒髪の男の子に尋ねられた。どうやらみんな勘違いをしているらしい。
まあ白鳥沢にいた女の人って言い方をされれば誰だってマネージャーだと思うよね・・・
なんて思いながらもそれを否定すれば、全員驚いたような声を出す。
え、私ってそんなに高校生みたいに見える?
いや確かに化粧だってそんなにしてないから子供っぽいかもしれないけどさ・・・
「元、白鳥沢のマネージャーです。今はK大学のバレー部マネージャーしてます。」
「白鳥沢の元マネージャー・・・」
「あ、ではこれから簡単な試合をやるので良ければ中で見ていかれませんか?」
「試合ですか?はい!お邪魔させてください!」
私が"元"を強調しながら言うと、カゲヤマ君は何やら眉間に皺を寄せて私をジッと見つめてくる。
その時は大して気にも留めなかった。
こんな奴が強豪校のマネージャーやってたのかよ、とでも思われてるのかなとしか考えなかった。
そんなカゲヤマ君の表情に首をかしげていると、私のことを見つけてくれた恐らく顧問の先生から嬉しい提案をしてくれた。
思ってもみなかった提案ににっこりと微笑んでお願いしますと頭を下げた。