第4章 磨斧作針ー3日目ー
正直なところ、貴大君と今まで通りに話すことが出来て安心している。彼がいつも通りに話し掛けてくれるのでわたしもいつも通りに対応する。少しだけぎこちないのは時間が解決してくれるだろう。
一君や一静君、そして徹君にも皿に盛り付けて渡したのだが。
やはり徹君は私の方を見ようとしない。まるで喧嘩したカップルのようだ。どれだけ考えてもその原因がわからなくて、これは突撃して聞き出すしかないかなと思えば、食後徹君への癖とアドバイスを記したノートを持って話してみようと決めた。
「京香さーん、おかわりある?」
「はいはい、どうぞ。って…旭君恐怖で顔引きつってるけど孝支君何したの…」
「ん?俺は普通に麻婆豆腐に唐辛子入れて食べてるだけだべ」
「その量、普通とは言わないからスガ!俺のには入れないでくれよ…」
「旭はほんとヒゲちょこだなー」
「今は関係ないだろっ」
「ほらお前らあんまり騒ぐなよ」
どうやら先ほど持って行った唐辛子の瓶半分程を一回で使い切ってしまったらしい孝支君。そりゃ隣で食べてる旭君恐怖だな。
目の前で繰り広げられている2人のやり取りにクスクス笑っていれば、大地君が困ったような表情で2人を連れ戻しにきたようだ。大地君も周りのことばかり気にして…私が居る間に、少しでも支えてあげられたらなと感じた。
相変わらず翔陽君と飛雄君は口にいっぱい含んで食べているので、またそれに気付いた大地君に怒られているし。力君も孝支君の真っ赤な麻婆豆腐を見て青ざめている。何とも見ていて面白い食事風景だ。
「京香さん洗濯物取り込んできました!」
「おおっありがとうー助かったよ」
ビシッと敬礼をした仁花ちゃんから一君のジャージを受け取れば、微笑んでから頭を撫でてあげればピシッと固まってしまった。
私が慌てて顔の前で手を振れば、ハッと気付いたと思ったら「こんな美人に頭を撫でられた…わわ私ファンに殺されるー!」と真っ青になって走って行ってしまった。
それを呆然と見ていれば、部員たちは食事が終わったらしい。続々と食器を片付けにきてくれていたのが見えれば洗わなきゃと腕まくりをした。
そして全て片付け終われば、体育館の方に行ってくると伝え、一旦部屋に戻ってノートを掴んでから徹君の姿を探した。