第1章 松野家長女、6人の兄がいます。
休みの日に限って…じゃないか、兄さんたちニートだもんね。家に居たらそりゃ兄さんたちに絡まれるか。絡まれないためにも彼氏作らなきゃなのか…。
「瑠璃、居る?」
ん…?この声は…
『一松兄さん?居るけど…』
「じゃあ入るね」
『えっ』
感動しちゃったじゃん。だって、今までの兄さんたちは声も掛けずに部屋に入って来たからね。
「…今日バイト休みなの?」
『うん…休みだけど』
「ふ~ん…」
『…』
一松兄さん、何も言わずに私の隣に座りこんだけど。いや、いつものことだけどさ。これ、居座るパターンじゃん。
『一松兄さんどうしたの?』
「何が?」
『何がって…』
こっちが聞きたいんですけど。
「ねぇ、ちょっと膝貸して」
『え』
困惑する私をよそに、一松兄さんはそそくさと私の太ももの上に頭を乗せ、膝枕。
「最近瑠璃、ずっとバイトだったでしょ?だから…充電みたいな感じ」
…そういえば。最近バイトだらけで、兄さんたちとあんまり喋ってなかったかも。だからかな…兄さんたちが構ってくるの。…いや、関係ない。いつものことだった。
まぁ、でも…一松兄さんならいいか。太ももの上にいるのが長男次男三男だったら振り落としてたけど。
『足が痺れる前にちゃんと退いてね』
「うん…多分」
多分…。痺れるな絶対。
なぜかはわからないけど、四男からの兄さんには甘いっていう自覚はある。妹なのに兄を可愛いと思ってしまう時がある。
「瑠璃、彼氏作んないでね」
『え?』
「さっきチョロ松兄さんから聞いた。彼氏作りたいんでしょ?でもダメ。作んないで」
…いや、一松兄さんにその権限はありませんけど?
「ただでさえバイトで瑠璃と喋る時間少ないのに、さらに彼氏にとられるとか嫌」
んんん…。やめて、拗ねないで、可愛い…。
『彼氏なんて、簡単に作れないから安心して…?』
「…よかった」
あー…負けた。彼氏、いらない。
…一松兄さんなんてМで闇松兄さんなのに…負けた…。
「いっちまっつ兄~さ~ん!!」
「あ、十四松」
「いたー!!!」
スパーンッと襖が開かれ、現れたのは案の定十四松兄さん。
『十四松兄さん、襖壊れちゃう』
「ごめん!!」