第3章 17:45、あとちょっとでバイトが終わりそうです。
『おそ松兄さんおまたせー!』
「遅くない!?18時上がりじゃねーの!?今18時30分だけど!?」
バイト先の近くにあったベンチに座っていたおそ松兄さんに声を掛けると、怒涛の勢いで怒られた。
『あのね、女の子には準備ってものがあるんです』
「…それはお兄ちゃんとデートだから少しでも可愛い格好でいたいからって捉えていいのかな?」
『…違うけど。まぁそう捉えていいよ』
全然違うけど、おそ松兄さんから不機嫌オーラが消えかけていたのでそういうことにしておいた。不機嫌のままご飯に連れて行ってもらって、「やっぱり奢らねぇ!瑠璃、お兄ちゃんのこと待たせたし〜」とか言い出しかねないから。
「しっかたねぇなぁ!可愛い妹め!!…にしても飯っていってもまだちょっと早いか。瑠璃、どっか行きたいところある?」
『んー、…あ!ちょっと服見たいんだよね!今バーゲンしてるし!』
「別にいいけど、それは買ってやらねぇぞ?」
『わかってます』
先程、バイト後の計画を立てていたお買い物を思い出し、おそ松兄さんに着いて行ってもらうことにした。服を買うことに関しては、おそ松兄さんが一番頼りになる。
トド松兄さんは、ああ見えて口出しが多くて自分の好きな格好ばかり押し付けてくるし、カラ松兄さんも意味わからない服ばかり提案してくるし、どの服を着ても似合ってるとしか言ってくれない。一松兄さんと十四松兄さんに至っては論外。一松兄さんは店の中まで一緒に入ってきてくれた試しがないし、十四松兄さんは…とにかくいろんな意味でうるさい。
他の兄弟に比べておそ松兄さんは、口出しは少ないし、似合ってるかどうか聞くと、似合ってないときは似合ってない、似合ってるときは似合ってる、と言ってくれる。トド松兄さんみたいに、自分の趣味を押し付けてくるしわけでもない。
『おそ松兄さんと服見るのが一番好きなんだよね!ありがとう!』
「え、なに急に…俺着いて行くだけだぞ?買ってやんねーぞ…?」
『いっつも一言多いんだよねぇ…それがなければ良いお兄ちゃんなのに…』
「なんか言ったか?聞こえなかったんだけど」
『別に〜?さ!行こ行こ!』
怪訝そうな顔をして私を見るおそ松兄さんを引っ張り、バーゲンをしている店に向かった。