第3章 17:45、あとちょっとでバイトが終わりそうです。
バイトもあと15分で終わる。18時上がりだし、買い物でもして帰ろうかな。そういえば、今日からバーゲンしてるんだっけ?欲しかったブーツがあるし、安くなってたら買おうっと。
ルンルンとバイト後の計画を立てながら、入り口の掃除をしていた。すると、何やら電柱の後ろから視線を感じた。なにか、とても感じたことのある視線…いや、毎日感じている視線だ。間違いない。これは…
『…おそ松兄さん。そんなところで何してるの』
「ありゃー!バレちゃった!?さすが瑠璃だなー!お兄ちゃん感心!」
電柱の後ろに隠れていたのは、赤いパーカーを着たおそ松兄さんだった。自分の頭をわしゃわしゃと掻き、満面の笑みで電柱の陰からこちらに向かってくる。
『何しに来たの』
「冷たいなぁ…可愛い妹の頑張って働いてる姿見に来ちゃだめなの?」
『だめ』
「えー!?それは冷たすぎない!?だめって!!だめなことなくない!?俺は瑠璃ちゃんを心配してですね!?」
『あ〜も〜わかったわかった!!もう少しでバイト終わりだから静かにしてて!!』
構ってちゃんなおそ松兄さんは、とにかく声がでかい、うるさい。通行人もチラチラとこちらを怪訝な目を向けながら横を通り過ぎていく。
「そんなことよりさぁ〜」
『そんなこと!?私今働いてるんだけど!?』
おそ松兄さんは自分を中心に世界が回っているとでも思っているのだろうか。とにかく我儘だ。さすがクズ6つ子の長男だけのことはある。
「なぁ、今俺に対して失礼なこと思ってなかった?」
『いつも思ってるけど?』
「え!?いつも俺のこと考えてくれてんの!?まじ!?お兄ちゃん超嬉しい!!」
言い方を間違えてしまった。おそ松兄さんはポジティブシンキング野郎だから…あとカラ松兄さんも。この二人を貶そうと思っても、いい感じに貶すことができない。けちょんけちょんにしてしまうか、それとも今のようにポジティブに捉えられるかの二択。まぁ、こういうときは『お兄ちゃんなんか大嫌い!』とでも言っておけば、さすがのポジティブシンキングな二人でもダメージを受けるようだから効果覿面なのである。
まぁ、自分自身でも認めているほどブラコンだから、本当に喧嘩したときぐらいしか大嫌いなんて言わないけど。